キス魔は健康!

「んぁっ、あんた! 起きなさい! 今日はラジオ体操ってのに参加してみようと思っているのっ! はーやーく!」


朝早くからなんだよ……。

ラジオ体操なんて小学生以来参加していない。


「早く起きないとあんたがシフォンと昨日の夜イチャラブしてた時の写真バラ撒くわよ!」


「んはぁっ! お前見てたのかよっ!」


「イチャラブは認めるのねーっ! あんたらしぃー! はいはいっ、さっさと着替えて!」


俺のタンスから何枚か服をポイポイこっちに向けて投げてきた。


余計なお世話だ……!


「やめろっつの! あと、服くらい俺が出すって」


「まっ、あんたの事だから余計なお世話とか思ってるんだろうなっ」


なんでこうも勝手に俺の心を読み取ってくれちゃうのか……。


俺はいつも通りこいつに振り回されながら結局ラジオ体操に行くことになった。

公園に着くと、周りはおじいちゃんおばあちゃんばかり。


「あらぁ~、若い子が来てくれるなんて珍しいことだわ~」


「若者の男が1人で来るなんていつごろじゃのぉう」


俺はそのおじいちゃんおばあちゃんに大歓迎された。

なんだか少し気持ちが良くなった気がする。


「なーんだ、あたしが思ったよりラジオ体操ってどうも面白みもないのなのねっ」


今、お前の言葉がここにいる人の耳に入ってたら完全に敗北だぜ……?


「そもそもなっ、ラジオ体操ってのはお年寄りが体のためにやる健康体操っもんだ! わかったか? 別に面白いもんではない!」


俺は怪しまれぬように小さい声でショコラに言っといた。

ついにラジオ体操は終わって公園にいたおじいちゃんおばあちゃんたちが次々と解散していく。

そして、最後にいたおばあちゃんが俺に


「いやー、若い子来るのが珍しくて嬉しくなっちゃったよ……。ほらっ、これっ! 貰ってきなさいっ」


と言ってポテチを1袋くれた。


「あっ、ありがとうございますっ!」


「また来てねっ、待っているわ」


どうやら、俺はおばあちゃんにお気に入り登録されちまったようだ。


「もぉー、何をしてくれんだ、俺また来なきゃ行けない感じになっちまったぜ」


「まあ、このラジオ体操ってのは行けばお菓子を貰えるってことを学んだし、公園の場所も覚えてるからこれからは一人で行けるよっ」


驚いたことになんにも学んでない……。

逆にここまでなんにも学ばないやついるか……?


「お前、勘違いしてるぞ? 今回はまだ俺たち初めてラジオ体操に参加して歓迎されてるってだけできっと今後から頻繁に通うと貰えないぞ……? あと、お前は俺以外の人間には見えないんだろ? なら意味が無いじゃないか!」


「そっ、そうなのか……っ! それは大変だなっ!」


何が大変だ。


「んで、これから俺は行かねぇからな。お菓子貰いに行くんじゃなくて、お前がこの先も参加したいなら勝手に行ってこい」


「ふっ、あんなところにはこのピッチピチ肌にこの最高なボディの最高な美少女が行く場所では無いわっ!」


あれ? これ前にも似たようなの聞いたことあるが最後の「最高な美少女」ってやつはこいつの口から聞くのは初だぞ?

でも地味に全て事実なのは腹立つところだ。

まあ、残念な美少女ってとこだな。

喋んなければ可愛いのに。


「まっ、お前は健康そうだから大丈夫だろうなっ……」


「じゃあ、あんたも健康か?」


「健康診断は引っかかってないぜ☆」


「そんなんでドヤ顔はダサい」


そこだけ辛口!?


「悪かったなっ」









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る