天使のような小悪魔のキス魔。

「かぁんたぁさぁん……、起きてますか……?」


眠っていると耳元から天使のささやき声が聞こえた。

夢にしてはなかなかはっきりと聞こえた。

最近は夢も立体音響なのか?


「んもぉ……。カンタさん! ちょっと起きてくださぁい……!」


俺の肩をトントンさすられたような感覚もした。

立体音響なだけじゃなくて、4D演出までされているのには若者の俺でもびっくりだ。


「って、ゆ、夢じゃない!?」


やけにハイスペックな夢だと思っていたらこの通りさ。


「カンタさんなぁに言ってるんですかぁ?」


「嗚呼、寝ぼけていただけだ。で、シフォンはなぜ俺を起こした!」


これは少し強く言ってしまったかもしれない……が、熟睡中に起こされたら誰だって言いたくなる!

でも……、


「カ、カンタさぁん……あのぉ……」


シフォンは俺の隣でおっちゃんこ座りをしてモジモジしている。

どうやら、怖がってはいないようだが違うことに酷く困っているようだ。


「どっ、どうしたんだ?」


「あっ、あのぉ……廊下が怖くてお手洗いにいけないのですっ……」


「そんなことか。お易い御用だなっ! ほれ、俺が着いていくから行くぞ!」


「っは、はい!」


そして、俺たちはショコラにバレないように静かに部屋を出た。

俺が着いていくということだった恥なのだが……いつの間にかシフォンが俺のパジャマをぎゅっと握りしめてくっついている。


「シフォン……ビビりすぎだぜ……?」


「だ、だ、だ、だ、大丈夫です! カンタさんがいるので……!」


俺がいるから大丈夫なのか!?

なら、俺が一生ついてやるよ!


「よしっ! 着いたぞっ! 俺ここで待っててやるから済ましてこいっ」


「ぜ、絶対にどこか行ったりしないでくださいよっ……!」


「行かねぇって! シフォンはもっと俺を信じてくれよ~!まあ、ショコラもだがな……」


「じゃ、じゃあ信じますよ……?」


地味に怯えた感じで言うな。

傷つくぜ。

そして、トイレのドアが開いた。


「カンタさんあり……がとう!」


「おっ、おう!」


「あのぉ……もし良ければこれのお返しで私が一緒に寝てあげましょうか……?」


は!?

なぜその発想に!?

まあ、ここは……


「お言葉に甘えてっ」


これで完璧だ!


「め、珍しいですねっ……! カンタさんが甘える……なんて」


「ま、まあそうだったかもなぁ」


俺は適当に笑って誤魔化しておいた。


「カンタさんは私たちが来るまでは一人暮らしだったんですよね……? 一人でお手洗いにいけるなんて凄いです……!」


「二人が来るまで一人暮らしだったというか俺はショコラが来る2日前から一人暮らしを始めたわけだったから言うて一人暮らしはしていない。だが、トイレは行けるぜっ!」


最後のを聞いたか?

今の俺最高にダサいことを言った。

現役男子高校生1年が一人でトイレに行けることを自慢しているこの地獄絵図はなんだよ!

そんなことをしているともうとっくに俺のベットだ。隣には天使のようなキス魔が居る。


「カンタさん寝る前に痛いところありませんか?」


「とっ、特にないぜ」


「嘘つきは良くないですよっ! カンタさん! こんなところに掻き傷があるじゃないですかー!」


なんで、そんなところにある傷を見つけたんだ。俺でも気づかんかった傷だぜ。しかも痛くないからなんにもないのだがな……。


「いやー、そのー、ちょっと首はくすぐったいからなあ……」



〝チュッ〟



「ダメですよ! きちんとお返しは約束通りしなきゃいいお嫁さんになれないって言われたことありますもん!」


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