キス魔の誘惑♡
今は夏休み。
俺はろくに友達もいないわけで、退屈に畳の上にぶっ倒れて漫画を読んでいる。
「カンタさんっ! これ、なんだかぐるぐるしていますぅぅうぅぅう~」
ありゃま、シフォンのやつ扇風機をじっと見ているから何かと思ったら目が回っているじゃないか。
シフォンがうちに来たと共に少し俺の生活に癒しが足りなかったということがしみじみ感じられる。
「それは、涼しい風を送る扇風機という機械だ。ずっと眺めていたら今のお前みたいになるから次は気をつけろよっ」
「はぁい」
そう言いシフォンはすぐに扇風機から離れようと立ち上がるがよたよたとなって立ち上がれていない。
まだ、立ち上がれるわけないだろっ!
すると、俺の登場から聞き慣れている声が聞こえた。
デジャブ……。
「あーんた、なぁにシフォンにデレデレしちゃってるのよっ! あと、その漫画なんの漫画かしらっ? またいやらしい内容のものかなぁ?」
あれは1週間ほど前だっただろうか……。
俺のベットの下のエロ本とエロ漫画とやらがショコラに見つかったのだ。
まるで、本当にアニメのような悪夢だ。
シフォンがいる時にその話題はやめてくれっ!
「カッ、カンタ……さん……? いやらしい内容のとは……? なんのことでしょうかっ……?」
相変わらずシフォンは純粋だ。
なぜ、この世界に何年もいるのにここまで真っ白な心を保てているのかが不思議に感じるほどだ。
「いやいや、これはその……。なんでもないから気にするな!」
「ふーん、こんなもんかね……。よっし! 没収!」
ってやっぱ気にするわ!
「また没収してどうするんだよ!」
「ないしょっ♡」
いや、ホントになにするんだよ。
そんなことでうかうかしていると……、
「あんた、こーゆうのが好きなんでしょう……?」
ショコラは俺の背中にくっついてきた。
細くて小柄の小さな体がそばにある。
動いたら壊れてしまいそう。
かすかに膨らんでいる胸が俺の背中に触れる。
「おっ、おい! お前は何をしてるんだ突然!」
キャラ激変で落とそうとでもしているのか!?
「なっ、何って……あんたが好きなやつのはずだが……?」
も、もしかして……、
「お前俺の漫画読んだろっ!」
「まあ、没収させて頂いたらついでにねーっ!」
どうやら、こいつは俺の読んでる漫画のやつを真似してるっぽい。
あの漫画だと……この後は……っっっ!
「おっ、おおおおお前ホントに何を読んでるんだ! よせっ!」
「なぁに、勘違いしちゃってるのよっ!しかもこれあんたの本でしょっ? うけるぅぅぅぅ! さっすが、チョロい童貞さんっ」
やっぱりこいつは『キャラ激変で落とそうクエスト』でもしているのか……?
そして、最後のチョロい童貞さんってのやめてくんねぇか!?
「カンタさんとショコラちゃんはやっぱり二人とも仲がいいですね~」
〝仲はよくねぇっ!〟
俺とショコラの声は見事完全一致したのだった……。
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