美少女キス魔はウザい!
「はぁ~、今日も疲れたぁ~」
学校が終わり、俺はいつもの通りにあるコンビニに向かった。
「おいっ! あんた、あたしにもなにか買ってくれるか?」
聞き覚えのある声が俺の頭上からした。
見上げると、
「お前! ここまで着いてきていたのか?」
「いいえ、あたしがあんたなんかに付きまとうわけがないじゃないっ! たまたま散歩をしていただけよ」
それは凄いたまたまだな……。
「まあ、それの方が俺的には助かるぜ」
「んな、なによそれ! もぉーっ! とりあえずこの新発売の濃厚かぼちゃプリンを買ってきなさいよね!」
「へいへい……」
俺は正直これ以上こいつに振り回されるのは御免だからとりあえず欲しがっていたなんたらかぼちゃプリンだかと俺が元々目的としていたポテチを買って店を出た。
「やったー! お菓子だー!」
こいつは気持ちの変わりようが凄い。
さっきまでは、あんなに俺にツンツンしまくって機嫌が悪そうだったのに、家に戻りプリンを食べるとなるとこの有様だ。
「ん~! これめっちゃおいしいよぉ~! ほっぺた落ちちゃいそう」
ショコラは見るからに幸せそうな顔をしていて、目もきゅるんきゅるんしていて今にもとろけそうな表情をしている。
「こんな美味しいの初めて食べた~」
ってこいつ俺のポテチ食っとるやないかい!
確かにポテチは美味い! それはめっちゃわかるぜ! 何故かと言うと俺も同じだからだ!
だけどお前は自分のを食え!自分のを!
「ショコラ! お前なんで俺のを食ってるんだ!」
「あれ? バレちゃったっ?」
はい! バッレバレですけど~?
「はいっ、これ! お前は自分のを食え!」
俺はショコラの目の前にあったプリンを指さした。
「ん? これもうないよ?」
ショコラは衝撃の一言を言った。
目をプリンの方にやると、その通りプリンの容器はすっからかんだった。
きれいさっぱり。
「おう、俺が買ってやったプリンを全部食ったのは偉い! ただし、俺のポテチを食うな!」
「ポペチ……? なぁに? それ? 美味しいの?」
ショコラは首を傾げて上目遣いで聞いてきた。
こいつは美少女だ。
めっちゃ可愛い。だから破壊力も強い。
こんな顔されたら許しちまうやつもいるだろう。
けど、俺は不意にも腹が立つ!
「ポ・テ・チ! ポテチだ! お前が今手に持ってボリボリ食っているのがポテチだ!」
「あ、これ最後の1枚……」
おいっ! こいつ、ついに俺のも全部食いやがったぞ!?
「あー、もう! これからお前のお菓子はポテチだ! でも絶対にこの先さっきみたいに俺のを食べるのはやめろ! わかったか?」
「うーん、それはどうだろーっ?」
〝チュッ〟
このタイミングでそれはウ・ザ・イ!
最高にうぜぇー!
もうめんどくさくなって俺は昼寝をすることにした。
「はぁ~、俺そろそろ眠いから昼寝するぜ」
そして、ソファーに寝っ転がった。
すると、ショコラは続いて話をかけてきた。
〝ねぇ、あんた名前なんて言うの?〟
衝撃の一言だ。
よく考えると確かに俺はまだこいつに名前を伝えていなかった。
「俺の名前は神崎カンタだ! よろしくな!」
「よろしくなは余計よ。じゃあ、これからカンカンって呼ぶわ!」
余計だなんて失礼な。
そして、カンカンってなんだよ!
俺はパンダじゃねぇ!
まあ、文句はこれくらいにしておこう。
実は俺は少し嬉しかった。
なんで嬉しいかって?
俺はまともに友達と言える友達が大していないからだ。
だから、あだ名というものをつけてもらうのも、あだ名で呼ばれるというのも全て初めてのものだったからだ。
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