キス魔のキスマは魔法のおくすり♡
頓知 純粋(ぴゅあ)
俺の前に美少女がやって来たと思ったら……?
「いたいのいたいの飛んでけーっ!」
〝チュッ〟
そんなのが聞こえて俺は飛び起きた。
「はっ!? って夢か~、なんだよ~」
どうやら今のは夢だったようだ。
やれやれ、俺もなかなか変な夢を見るようになったぜ。
「なぁ~に言ってるの! 夢じゃないよっ! ほら上向いて! あたしだって! あーたーし!」
言われた通りおずおずと俺は上を向く。
すると、小悪魔のような格好をした超美少女が俺の顔面に飛んできた。
〝チュッ〟
そして、あの時かすかに感じたふにふにとした唇の感触が俺の頬に……。
「おっ、おまっ……! 何者だ!」
「さっきも夢であったじゃない! 覚えてないの?」
確かにこの美少女は俺の夢で会ったこと完全一致している。声も顔も。
そして、なんとも際どいこの小悪魔コス。
けれども、どうしても名前が浮かばない。
「う~ん、覚えてないなぁ~」
「もぉーっ! なぁ~によ! このクズ男っぷり! 女の子の名前を覚えてないなんてサイテー!」
じゃあ、なんでお前は俺にあんなことしたんだよとツッコミたいところだが面倒くさそうなのでやめておく。
「はぁ、仕方がないから改めて自己紹介しとくわっ! あたしはショコラって言うの! ショコラ! もう覚えたよねっ?」
「あ~、そうだったなぁ……。なんか美味しそうな名前をしていたのは覚えていたのだが……」
「おっ、美味しそうだなんてっ! 憎たらしいオスめ!」
「オスッて、俺は動物じゃねぇぞ!」
「アンタは汚らわしい獣だ! 私を食おうだなんて!」
「いや、そうじゃなくてほら、お前の名前って食べ物じゃん?」
「はっ……。んぁっ~! そんなんどうだっていいでしょっ! もうあたし戻るからっ!」
ぷいっと俺から顔を逸らし拗ねてしまった。
これがまた少し可愛いのが少し腹立つ。
「ってか、お前ってどこから来たんだ?」
突然出てきて突然消えようとするから俺は不意にも疑問に思った。
きっとこの状況なら誰しもそうなるだろう。
「あんたの夢の中よっ」
そんくらい俺にだってわかるさ。
俺の事をなんだと思っているんだこいつは。
「じゃなくって、あの……。こう、家とかあるのかって話」
「しっ、失礼ねっ! って、あたし……お前の夢の中から出てきたのはいいけど……言えなかった!」
「ど、どうすればお前は夢の中に戻れるんだ?」
「あんたがまたあたしの夢を見ない限り戻れないわっ」
は……?
「んなわけで、あたしやっぱりあんたの家に泊まらせてもらうわっ!」
ショコラは悪そうなのが滲み出ている、これこそ憎たらしいというのが似合う笑顔をうかべた。
「まあ、いいだろう。でも聞いてくれ。さっきのような事は絶対にこの先しないでくれ。俺は男だ。そして、お前曰く憎たらしいオスらしいからな。」
よしっ、これであーいうことはこの先もうないだろうと安心していたら
「え? あたし、言っとくけどキス魔っていう小悪魔だから。キスをしまくるのが仕事なのっ! クックックッ……」
と衝撃の一言を放った。
なんとびっくり! 俺の夢に出てきたこの美少女はただの小悪魔コスをした女の子ではなくキス魔だったのだ……!
「は……?」
「まあ、これからヨロシクってことでなっ!」
「え……?」
「あっ、でもあたし他の人には見えないからどーってことないよっ」
「お、おう……」
こうして俺とキス魔のショコラとの日常が幕を開けた。
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