第3話 三人の男
静まり返った店内。
嵐のような雨と風の音だけが、店内に響いている。
男が灯したテーブルの上のキャンドルの炎が、頼りなく揺れている。
向かい合って座る中年男と青年に会話はなく、気まずい空気が流れている。
時間を気にしているのか、中年男は時計をしきりに見ながら煙草を吸っている。
青年はと言えば、落ち着きなく不安げな様子だった。
暫くすると、男がハンバーグを持ってやってくる。
男は皿を、中年男と青年の前に静かに置いた。
「雨に打たれて寒かったでしょう。温かいうちにお召し上がりください」
「どうか、あなたもお座りになってくださいませんか?」
青年の申し出に男は従うように、優しく微笑むと椅子に腰かけた。
「お二人を、無理にお引止めしてしまって・・・申し訳ありません」
「いえ・・・申し訳ないのはこちらの方です。雨宿りさせて頂いてる上、ご馳走までして頂いて、本当になんとお礼を申したらいいのか・・・」
青年は申し訳なさそうにそう言った。
妙に丁寧な青年の言葉に男は吹き出しそうになった。
お礼を言いたいのは、男の方であった。
こんな寂しい夜に、一人で居たくはなかったし、皿の上の無意味なハンバーグに、ほんの少しだけ意味を持たせることが出来たのだから。
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