第2話 負け組★理不尽な領主様



 とまぁ、説明するとは言ったが、今さらそんなことするまでもない気がする。


 簡単に言ってしまえば単純で、俺は領民に好かれてはいないのである。


 女王候補や他の貴族と違って、平民である領民が王子である俺を雑に扱ったり、いじわるしたりするということはない。

 だが、領民が俺に向けてくる視線は無感情、もしくはネガティブである。

 無感情の方は俺の存在で迷惑が掛からなかった領民で、ネガティブな方は俺の存在で迷惑を被った領民だ。


 どういうことかもう少し詳しく説明をすると、俺を生んだことで母は第1位女王から第7位に下がった。

 その結果、領内に四つあった街が他の領地に組み込まれて二つになり、街と一緒に村落も持っていかれて減ってしまったのだ。


 同じ領内の街同士というものは強い結びつきがあり、自分が所属する領地を盛り立てようと協力関係にあったりする。

 たとえば一人の行商人が領内の街と領外の街のどちらか一方にしか行けないとなったとき、基本的に領内の街を優先する。

 商人の動きが活発になれば経済活動が活発になり、街は繁栄する。

 この世界では子供でも何となく理解している、世の中の流れである。


 つまり逆を言えば、領内の街が減れば訪れる商人が減り、商人が減れば経済活動が停滞する。

 その結果、領地が衰退するのである。


 そのあおりをもろに受けたのが俺の領内の商人や、その商人たちに関わる領民たちだった。

 これらがネガティブな視線を俺に向ける者たちである。

 その数は街の住人の半数以上をかる~く超えているのだった。


 領民の大半にネガティブな感情をぶつけられる領主様。

 気の弱い奴なら胃に穴が開き、気が強い奴でも暗闇の中で寝ていたら不意に泣きたくなるようなストレスだろう。

 そんなストレスを振りかぶって思いっきり投げつけられるキャッチャー役、それが俺。

 理不尽な領主様である。


 理不尽な領主というのは、理不尽をする領主という意味じゃなく、理不尽に嫌われている領主という意味なのだった。


 俺はなんにもやってないのに!!





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