第12話 クリスマス 2


それから恵のテンションが上がり始めジェットコースターを5回連続で乗ったり、ゴーカートで何度も勝負したりなど、俺も恵のテンションに釣られ思いっきり遊び回った。

始めは意識していた恵の手も次第に意識から離れ、当たり前ように恵の手を握り、移動中や乗り物に乗っている時など必要でない限り離すことはなかった。



夕陽が沈みかけた頃、俺たちは観覧車に乗り一つの窓から隣合わせで外を眺めていると、園内の木々や花壇が七色に輝き出しあっという間に遊園地全体が光の絨毯になっていた。



「イルミネーションだ......!」

「話題になってたのはこれだったんだな」



園内に人が増え始め、みんなイルミネーションが目当てのようだ。

だから昼間は全然人がいなかったんだな。



「確かにこれは話題になるもなるよね、

だってこんな綺麗な景色を好きな人と見れたら、幸せな気持ちになるもん」



薄暗い観覧車の中、そう言った恵の瞳はイルミネーションの光で薄っすらと輝いており見惚れてしまうほど綺麗で、俺は心が暖かくなるような感じ、これが幸せか?と考えようとしたが、今はただこの気持ちに浸りたいと思い考えるのをやめた。



「でも今日少し前進かな」



恵はニヤついた顔で今も尚繋がれている手を上げて見せる。

あっと思い咄嗟に離そうとするが、恵はそれを許さず。



「始めは智也君も緊張してたみたいだけど、途中からほとんど意識してなかったよね?

私は今日ずっとドキドキしてたんだからね!

始めは私からだったけど、途中から智也君から握ってくれて、何度もニヤニヤしそうになる顔を止めるの大変だったんだよ」

「いや、あれは何というか......、俺も楽しくなって自然と握ってたというかだな......、てか別に顔のニヤニヤぐらい我慢してなくても良かったんじゃあないか?」



「ここで私からの教え!

好きな人といる時は綺麗に見られたいと思うもの!

深い関係になれば、だらしないとこを見られてもいいと思うけど、今日初めての好きな人とのクリスマスデート!少しでも綺麗に見せたいと思うのが乙女心!

だからニヤニヤして引かれるようなことがあればトラウマ物です!」



相変わらずの豹変の早さと凄い力説だな、でも今日のは何だか照れる......。

今の恵がいつもにも増して綺麗に見えるからか?

確かに恵は誰から見ても綺麗に見える、けど俺が今感じてるのは、その他大勢が思うような感情か?

はっきりとは分からないけど、でも俺は恵と一緒にいたいと思える。



「ありがとうな恵、今日は恵とここに来れて良かったよ」



そう素直に伝えると、何故か恵は顔を俯けボソッと呟き始めた。



「智也君それズルい......」

「何でだよ」

「だって今まで見た中で一番優しい顔だし、それにその言葉、もう顔のニヤニヤが止まらないよ......」



恵の横顔から見える耳はイルミネーションの中でもわかる程赤く染まっていたーーー




それから俺たちは観覧車を降り帰宅、遊園地を出るまで恵は赤いままだったが、冷え込む寒さを和らげるかのように手は離すことなく俺の手を握ったまま静かに隣を歩く。

因みに今日は恵と2人、俺の家でケーキを食べることになっている。父さんは会社のパーティーでいない。



帰り道、予約したケーキとチキンを受け取り家に着き、遊園地でのことを話しながら食べ進む。

終始笑顔のまま、食後2人並んでソファでゆっくりした後、お互いプレゼントを渡しあった。



恵のプレゼントは、赤色のマフラーで、フワフワとした触感でとても暖かく、嬉しさと恥ずかしい気持ちが混み上がる。



恵もプレゼントを開け、赤色のマフラーを取り出す。



そうお互いプレゼントは赤いマフラー。

話し合って決めたわけでもなく、品は違えど偶然同じ物を選んでいたのだ。

恵はえっ?と言わんばかりに軽く口を開け驚いていたが、すぐにニコニコした表情に変わった。

俺は恥ずかしさもあり、何て顔をしたらいいのか分からず苦笑する。



「ありがとう智也君、このマフラー大事にするね」

「お、おう、こちらこそありがとうな、俺も大事に使わせてもらうよ」



恵の優しく柔らかい言葉に、俺は気恥ずかしさもあり上擦った声になってしまった。

暖房が効き過ぎているせいか、顔の火照りが止まらず、何故だか恵を見れない。

時計に目を向けたとこ、時間は10時を過ぎており、俺は恵を家まで見送った。




もちろんお互い赤いマフラーを巻いてーーー




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