第11話 クリスマス 1


現在12月24日、あの勉強会から何度か4人集まって勉強することはあったが、基本的恵といることが多かった。

恵が何度も家に来るようになって父さんとも面識を持ち、いつの間か合鍵を渡されていたようで、家に帰ると恵と父さんがいたなんてこともあった。



その時はどうやら父さんが高級な肉を取り引き先から貰い、恵も呼んだとのことだったが、いつの間に連絡先交換したんだろうか。

ちなみに父さんは付き合っていることは知っているが、関係性までは説明していない。

というか改めて振り返ると、この約1ヶ月半で関係構築が驚くほど早いな。



そんなことが有りつつも、今日はクリスマス、いちよう恋人である恵とどこかに行く話しをしていたのだか、現在俺と恵は何故か電車で2時間のとある寂れた遊園地に来ていた。



「山の中の遊園地て、静かで空気が気持ちいいね」


今日の恵は刺繍レースの白いスカートにベージュのカーディガン、その上に淡いオレンジ色のダウンジャケットを着ており、黒髪も相成って大人の雰囲気も醸し出し、綺麗で可愛いくも見える。

俺は紺色のジーパンに白のセーターに黒いダウンジャケットといつも変わらない服装だ。



今日は晴天で日向が心地よく、恵は深呼吸し山の空気を味わい楽しそうだった。



「いや確かに空気は気持ちいいけど、遊園地として見たら、この静かな光景はどうなんだ?」



改めて言うが今日はクリスマス、遊園地にとっては稼ぎ時として大事な日の筈だが、ゲートを潜った先に広がる光景に客は1人もおらず、というかゲート口を除いた園内にスタッフすら見当たらない。



「貸切みたいで、何か得した気分になるね」

「ポジティブだな、普通何か少し寂しい気持ちにならないか?山奥の小さな遊園地に客が誰もいないんだぞ」

「でも智也君も私も1人じゃあないよ、今日は2人だよ、だから全然寂しくないし、寧ろ智也君と人目気にせずデートできるから良かったよ」



横から見える笑顔は遠慮とかではなく、本当にそう思っているのが感じ取れた。

普通に照れ臭いこというから、どう反応したらいいのか分からないな。

けどせっかく来たことだし、寂れていようが人っ子1人いなかろうが楽しむとするか!



「けど智也のお父さん凄いね、ここのチケットもそうだけど、この前もあんな高そうなお肉ももらったりして、もしかしてどこか有名の会社の幹部だったりとか?」

「いやただの営業部課長だよ、まぁ社内や外部からの評判が良いとは、沙耶香の親父さんから聞いたことあるけど」



そう今日何故ここにいるのかというと、3日前ぐらいだったか、評判が良いらしい父さんが取り引き先から今話題らしい遊園地のチケットを貰ったことが始まりだった。

チケットは2枚あり父さんが、男2人で行っても虚しいだけだから恵ちゃんと行ってこい、と言われ恵に連絡し伝えるも反対することなく、今に至る。

というかここの何処に話題になる要素があるんだ?

見た感じ潰れかけ寸前のとこにしか見えないけど。



「智也君のお父さん凄い優しい人だもんね、何て言うのかな?心の器が大きいみたいな感じがする」

「いやどこがだ?恵と家で勉強してるて連絡しただけで、帰って来て早々産婦人科の資料を堂々渡してくるのに?」

「あははは......、あれは流石にびっくりしたけど、でも逆にユニークで楽しいじゃあない」

「びっくりした割にはありがとうございますて言って普通に受け取ってたよな......」

「いや、あれは......その、折角智也君のお父さんが気を使ってくれたの断るの悪いかなて思って」



何故目が泳いでるんだ?

恵は話しを逸らすように、「あっ!あれ乗りに行こ!」と言い、ジェットコースターの方を指差し俺の手を握り引っ張るように前へ歩いて行く。



恵の手温かいな、そういや恵と手を繋ぐのは初めてだな。

流れて的に繋いだけど、普通は男から握るもんじゃあないか?

まぁでも俺は恵の生徒みたいなもんだし、気張る必要もないか。

日向のせいか、俺は身体が暖かくとても心地よくなっていた。

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