第10話 勉強会 2


俺は時間を確認した後、2人の惚気話しを中断させ勉強を再開し、休憩も挟みながら勉強を続け、気がついたら時計の針は18時を指していた。

そろそろ解散の合図をするか思い立ち上がろうとしたとこ、沙耶香も時計に気づき、爆弾発言を落としてきた。



「もう暗いし、今日はみんなで智也家に泊まっていかない?智也のお父さん昨日から出張で一週間は家にいないんだし」



おっ、お前、急に何言ってるんだ⁉︎



「俺は良いぞー」

「ちょっと待ってね、親に確認してみる」



いやいや俺の意見は⁉︎

今日は俺の意見がないことにされる日か何か⁉︎

恵もノリノリで既に部屋の外で電話してるし......。

でもさすがに親御さんは反対するだろう。

いくら女子がもう1人いるとしても、保護者がない中、年頃の男女が同じ屋根の下で寝泊りするなんて普通許可するはずがない。

沙耶香の親は和也も含め家族ぐるみの付き合いがあるから許可するだろうけど、恵は違う、許してくれるわけがない。



「お泊まりの許可出たよ!」

「何でだ⁉︎ちゃんと説明したのか⁉︎俺たち4人だけで誰も大人の人がいないんだぞ!」



電話を終えた恵が扉を開け、嬉しそうに報告した。

無理だと思っていた分、逆の報告を受けた衝撃で咄嗟に突っ込んだが恵は不思議そうに首を傾げる。



「私の親、智也君と付き合った経緯も含めて全部知ってるよ?ただ今回和也君もいるから、沙耶香ちゃんのことも含め説明してたの、そしたらお父さんが、2人にも協力してもらって頑張れて言ってたよ」



いや恵のお父さん寛容過ぎじゃあないか......?



「智也が気にし過ぎなのよ、私のお父さんも恵とこと似たようなもんよ、むしろウザいくらいだし」

「さっき俺とこに沙耶香の親父さんから、子どもの名前決めたか?てレインきてたぞ」

「ね、ウザいでしょ?」



いや沙耶香のおじさんも和也に何送ってるんだ?

和也たちも特に気にする様子もないし、2人の中ではこれが普通なのか?

恵は何故か軽く俯きながら耳まで赤くして、「子ども......」て呟いてるし。

こうして泊まることが確定し、夕飯をどうするかと流れなったが、はい先生!と言わんばかりに恵が手を挙げ、自分が作ると言い出し、なら私もと沙耶香がそれに乗っかる形となった。



メニューは家に材料が揃っていることもあり、無難にカレーとなった。

一階リビングで俺たち男2人は4人掛けソファで寛ぎ、恵たちはキッチンでカレー作りを始め、2人とも楽しそうに話し声が聞こえてくる。



「そういえば、何で沙耶香ちゃんは智也君のお父さんの予定まで知ってたの?」

「私のお父さんと智也のお父さんは同じ会社の同僚なのよ、加えて和也のお父さんはその後輩、家も近いことがあって幼い頃から自然と3人でいることが多かったわ」

「だから3人とも仲良いだね〜」



仲が良いというより気づいたら一緒にいたから、それが当たり前になってるだけなんだよな。

和也と沙耶香が付き合ってからも関係は変わらず今もこうして3人でいるが普通になっている。

2人からもうできる上がると声があり、俺と和也はダイニングテーブルにスプーンなど置き、恵たちがカレーを運び終え、勉強時と一緒の位置に座る。



「「「「いただきます」」」」



うん美味しい、でも何だろう?俺が知ってる市販のカレーじゃあない気がする。



「おぉ美味しいな!これ市販カレーか!?」

「あぁ、市販とは思えない美味しさだ」

「良かった......、気にいってもらえて」

「それ市販のルーをアレンジしたものなのよ、しかも2人の好みに合わせて別々にアレンジしてね」



恵は嬉しそうに、沙耶香はドヤ顔で話す。

いやそれ結構大変なんじゃあないか?

それと沙耶香は昔から友達を作るをうまかったけど、恵も馴染めてるようで良かった。

部活もやっていたからか、コミニュケーションを取ることには慣れているのかもな。



「恵たら、智也の好みとか説明してる時、必死にメモして可愛くて仕方なかったわ」

「さ、沙耶香ちゃんそれは内緒て言ったのにー!」

「あらそうだったかしら?」

「沙耶香ちゃんー!」



いや仲が良いというより、娘と母親みたいな感じだな。

でも俺の好みがそんなに気になるのか?

料理に拘りが強いわけでもないと思うんだが。



「別に俺の好みなんて気にしなくてもいいだぞ?

俺はたいして味煩いわけでもないし」

「はぁ......智也ね......それ「智也君!」えっ?」



あっ恵のこのキリッとした顔は、



「ここで私の教えです!」



恵先生になった時の顔だ。



「料理の味については、彼氏に合わしていきたい、彼女の味に彼氏の舌を変えたい、基本的に2種類あります。もちろんそれ以外もありますが、ここで私が重要視するのは基本の2つです!

彼氏に合わして、徐々に私の味に変えて、いつの間にか私の味が智也君の味になる、私が目的としているのはそれです!

それによって智也君と共有できることが増え、私の幸せに近づきます」



なるほど、けどこれは俺に言ったら意味なくなるんじゃあないか?

別に嫌ではないだけど....、あっ、和也たちの顔が固まっている。



「「................」」



2人同時に顔をこちらに向け目で、これどういうこと?と訴えてくる。

まぁ俺も初めは恵の豹変に頭が追いついてなかったからな。



「この前説明したけど、これが俺たちの教わり教わる関係だよ」

「なるほど、このことだったんだな」

 


沙耶香も納得したように頷き、その光景を見ていた恵が段々赤面していき。



「何この可愛い子......!ヤバいわ......!」



沙耶香が目を輝かせ、気持ちを抑えるように若干ハァハァと息を荒くしながら耐えている。

側からみたら、ただのヤバい人だな。

それからカレーを食べ終え、風呂に入り勉強を再開した。

恵の着替えは沙耶香が家から取りに行ったピンク色でモコモコしたスウェットを着ている。



勉強も順調に進み10時になり、沙耶香の一言で勉強を終了し寝ることにした。

恵と沙耶香がいろいろ話したいということで、男女別々の部屋に決まり、俺たちは使っていない部屋に布団を敷き眠りについた。

翌日の朝、恵たちはやたら眠たそうに目を擦っていた。

何時まで起きてたんだよ......。

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