第9話 勉強会 1


土曜日午前10時信楽宅。



「さぁまず自己紹介から始めるか」



長方形の机に男女が交互に座り、沙耶香の隣、和也が立ち上がり、その掛け声ともに勉強会がスタートする。

沙耶香と向かい合わせの恵から始まり、沙耶香、和也と順に自己紹介していく。

3人とも堅苦しいのは苦手ということで敬語なしの名前呼びとなった。



「それにしても経緯はどうであれ、あの智也が女の子とお付き合いするなんてねーーー」



自己紹介が終わった後、沙耶香が感傷に浸るかのように遠い目で俺を見ながら話し始め、ベッドに背を預けた和也も同調するように頷き続ける。



「確かに前までじゃあ考えれなかったな」

「そうなの?何だか以外、智也君凄いモテそうなのに」



恵が訝しげに小首を傾げる。



「実際モテたわよ」

「今は大分とマシになったが、部活を引退するまでのこいつ、ヤクザみたいなオーラ出してて、凄い近寄り難い感じだったからな」



無我夢中で陸上に打ち込んでいただけなのに周りからは、そんなヤバいやつて思われてたんだな.......。

何か地味に凹む......。



「部活を引退してチャンスと思った子もいたみたいだけど、逆に現役と引退後の落差が激しくて声が掛けづらいみたいになってるしね」



話しだけ聞くと、何だか定年退職して疲れ切ったサラリーマンみたいになってるな......。

沙耶香はさらに話しを続けていく。



「私としてはライバルが増えなくて良かったけど、逆にその頃の智也君も気になるなー」

「ならその頃の写真見てみる?知り合いの子に頼まれて撮ったのが、何枚か私の携帯に何枚か入っているから」

「ちょっ......!お、お前、それいつ撮ったんだよ⁉︎俺撮られた覚えないぞ⁉︎」

「当たり前よ、隠し撮りなんだから」



キョトンした顔で、さらっと言いやがった。

沙耶香はこちらにお構いなしと言った様子でスマホを操作していく。



「おい和也、自分の彼女が他の男を隠し撮りしてたんだぞ、彼氏として何か言うことがあるんじゃあないか?」

「彼女の撮影技術の高さに惚れ直した」



何を言っても無駄なのか......。

和也は俺も見せてくれといい、沙耶香のスマホを覗き込んでいる。

いやお前既に見てるだろ。

恵も沙耶香の隣で、目を輝かせ写真を釘いるよう見て、「ほぁ〜」と吐息を垂らしている。



しかも頬も赤らめて何度も「かっこいい」て呟き、それを真正面から聞いている俺は恥ずかしいくて身体中がむず痒くて落ち着かない。

というか今日て勉強会のはずだよな?

それから恵は満足したのか、俺の隣に戻り凄い幸せそうな笑みをしている。



しかも戻る前、こちらに背を向け沙耶香と何やらボソボソと話しており、こちらに戻る際「楽しみにしてるね」とも言っていた。

和也は俺の方を見て、ニヤニヤしているし、多分気になった画像を送ってもらうみたいな話しをしていたのだろうけど、どの道俺の意見がないことは変わりなかった。



それから勉強が開始され、恵も沙耶香たちと大分と打ち解けたようで気楽に質問をし順調に進んで行った。

昼飯時になり、沙耶香と恵の意見でピザを注文、15分後には届き一斉に食べ始める。

途中、恵の「2人は付き合ってるの?」と何気ない質問によって和也と沙耶香の惚気話しに発展し、何とも胃がもたれる昼食となった。

俺は軽く肩を落としゲンナリしていたが、その横で恵は片方の頬に手を当て、羨ましいそうにーー



「良いな〜、私も......」



と頬を軽く赤らめボソボソと呟きながら、2人のやり取りを見つめていた。



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