第8話 放課後デート 2


この街には駅から少し行ったとこに大きなショッピングセンターが有り、俺たちはその中の本屋に移動した。店内は広く看板を確認しながら参考書コーナーへ向かう。



待ち時間で調べた情報を元に参考書を探し、思いの他早くに買い物は終了した。

さすが解散するには早いように感じ、恵も同じ気持ちなのか苦笑し、どうしよか?と言わんばかりにこちらを見ており、少し考えた後俺たちはセンター内の喫茶店に移動する。



「ありがとう、おかげで良いのが買えたよ」

「誰かが遅かったおかげで、ゆっくり調べることができたからな」

「あのセリフは嘘だったの⁉︎」

「いやいや冗談だよ、あれぐらい少しの時間で充分調べられるから」



恵の驚いた表情に我慢出来ず笑ってしまった



「もうびっくりしたじゃあない、というか笑い過ぎ」

「........,」

「急な真顔もやめて⁉︎」

「恵は我が儘だな」

「これ私が悪いの⁉︎」



恵て意外とイジると面白いな、本人はブスーとした表情でこちらを睨んでいるが。

でもこうして恵と改めて話すのは初めてだな。

幾らか俺のことを知っているようだけど、俺は恵のことを、ほとんど知らない。



「恵てどこの高校なんだ?」

「何事もなかったように話し続けるんだね......」



疲れたように肩を竦めるも、元から切り替えが早いのか、すぐに表情を戻し話しを進めていく。



「そういえばちゃんと自己紹介してなかったね

改めて、私は水矢(みずや)

高校3年 神楽坂恵 元陸上部、競技は100m、これでも全国大会の決勝まで行ったんだよ!まぁ結果はベスト6だったけど......」

「水矢高校て確か毎年何人も全国大会に出場している、陸上の強豪校だよな?

結果はどうあれ、そこで全国大会決勝まで行ったんだから凄いな」

「ありがとう、でもその代わりに練習がもの凄い厳しくて辞めて行った子も何人もいたけどね」



確かにあそこは練習が全国でも厳しいことで有名で、その代わりそれに伴った成績をいくつも残している。

ちなみに山城高校陸上部も全国では有名な強豪校ではあるが、さすがにあの水矢には劣る。



「それは大変だったな、大学では陸上続けないのか?」

「全国大会で全部やり切った感があって、続けたいとは思ってないよ。

それより智也君のことも聞かせて」

「いや今さら俺のことは、いいじゃあないか?」

「それでも聴かせて」



粗方調べ済みみたいだし、今さら必要もないと思...、いやおねだりするような目で下から訴えないでくれ、口も少し開けてるけど逆に艶かしく見えるから。

少し気恥ずかしい感じもあるが仕方なく話すことにした。



「山城高校3年、信楽智也、元陸上部で競技は恵と同じ100m、結果も似たような感じで全国大会ベスト5、これでいいか?」

「うん、ありがとう」


何でそんな満面の笑みなんだ?


「智也君は普段何してるの?」

「これといって何もしてないな、敷いて言うなら、スポーツ系の漫画を読むくらいだな」

「やっぱり男の子だね」

「恵は?」

「私は少女漫画とかかな、ほら学園ものとか」

「アカハライドとか?」

「そうそう!私漫画からだったけど、面白くて映画も見に行ったの!」

「部活の女子から聞いたけど、主人公役の女優さんが凄い良かったらしいな」

「そうなの!凄く綺麗で憧れちゃうよ!」



それからも話題は尽きず、途中何度か好きな食べ物だったりと、いろいろなも質問もされた。

お互いの親の話しになり、母親が俺の小学低学年の時、病気で亡くなったと話した時、恵は凄く申し訳なそうに、ごめんなさいと言い俯いていた。俺自身今は殆ど気にしていなかったため、父親と幸せに暮らして今の俺がいることと笑顔で話していったら、恵も徐々に表情を戻していった。



けど、この話しをすれば恵が気を使うのはわかりきっていたはずなのに、何故俺はこの話しを恵にしたんだ?

普通に考えれば、親の話題を避けることもできたはずなのに。

考えても答えは出ず、俺は落ち着いた恵を確認し話しを切り替えた。



「俺の話しばかりでしても、恵も楽しくないだろうし、別の話ししないか?」



そう尋ねたとこ、キリッと表情に溌剌(はつらつ)と声に変わった。



「ここで私からの教え!

好きな人のことなら、どんな些細なことでも知りたい思うのは当然です。知ることができて良かったと思うのはもちろん、その情報から少しでも好みの女性に近くことができるようになります。また話しを広げることで次のデートに繋げることができたり、相手と同じ趣味も始めれば親密度が増す可能性も高まります」

「な、なるほど」



圧巻とも言える教えを受け、言葉がそれしか出て来なかった。

俺の話しが恵にとってプラスになっているようで良かったが、相手の趣味まで合わせる必要はあるのか?

無理してもエラいだけだと思うけどな。



恵にそのことを聞いてみると、「逆に視野が広がっていいじゃあないかな?」と言われた。

まぁ確かに自分が選ばないようなことを選ぶのは知見が広がっていいかもな。

時間も夕飯時に近く、途中まで一緒に帰り解散となった。

家まで送ろうかと聞いてみたが、家が本当に近くにあるようで、遠慮して帰って行った。

家の近くショッピングモールがあって便利そうだな。

いや逆に騒音が大きいから、逆不便か?

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