第6話 その後



「ところで何で俺のこと知ってたんだ?」

「あー、それはね......」



あのやり取りから静かな時間が訪れるも、何がおかしかったのかお互いの顔を見るなり笑っていた。

それからお互い自然と口調を崩し話していた。



「私陸上部だったの、今年の全国大会決勝でゴール後の信楽さんを見た時、他の選手とは全く違う方を見ているように感じて、どこ見てたのか気になっていたら、光坂駅前の自販機で信楽さんが見つけて、けどあの時と全然雰囲気が違ってて、何かそこにギャップみたいのを感じて、そこから気になり始めたの」



決勝かー、あれからだったな、悩める日々が始まったのて。



「それから知り合いの子にもお願いして調べてたら、名前や学校とかもわかって、住んでる街も同じてわかってからは、駅で友達を待つフリして探したこともあったよ」



マジか、なら知らない内にすれ違ってたこともあるのか?

というか、見た目によらず意外と行動力あるだな。

雰囲気も始めは内気な感じだったけど、今は何というか無邪気で活発的な感じがする

これが本来の彼女なのか?



「うん?陸上部だったてことは、今違うのか?」

「もう引退して、今は受験生だよ」



てことは同い年か、てっきり年下かと思った。

でも受験生てことは、今て結構忙しいじゃあないか?まぁ俺もだけど......。



「えっと、失礼なことを聞くようで悪いけど、こんな時期に付き合ってたら、勉強の妨げになるじゃいないか?」



あっ何かムッとした表情になった。

これは怒らせたか.......?



「ここで早速私からの教え!

この場合は寧ろ向上心が高まり、より勉強に集中できます。その理由は、彼氏と同じ大学に通い、一緒に学生ライフを送りたいからです。それに付加価値を加えると一緒に勉強できるシチュエーションも生まれます」



情緒不安定なのか、テンションの変動が激しいな、何か顔もキリッとして、眼鏡が見えてきそうだ。

でもそうか、受験生同士が付き合うと、そういう効果もあるのか。

真面目に頷いていたが、何かが頭の中に引っかかったように違和感を覚え、先程の内容を思い出してみる。

確か、その理由は彼氏と同じ大学に通い.........うん?



「同じ大学?てことは一緒のとこを受験をするのか?」

「そうだよ」



今さら?と言わんばかりに、何の躊躇いなくあっさりと肯定する。

あの出会った当初の内気な彼女は何処へいったのか......。



「いや恥ずかしい話し、俺まだどこ大学に受けるかも決めてないんだけど」

「ならこれから一緒に決めよ!」



ルンルンといった感じで凄いニコニコしてる

とりあえず初めてできた彼女は、可愛くてパワフルなことがわかった。



「いちよう確認するけど、大学では陸上を続ける気はないの?」

「俺の友達にも聞かれたけど、それはないな」



そう答えると、軽く俯きうーんと唸りながら、人差し指を唇に当て何やら考え始めた。

そして何かを閃いたのか、顔を上げる。



「県外の大学に受験しよ!」

「何で県外なんだ?」

「そこでお互い一人暮らしを始めたら、アタックするチャンスも増えるし、信楽さんも学ぶ機会が増える!どう?」



名案と言わんばかりに意気揚々と話し始めた。

いやさすがに県外は......、いや意外に有りか?

確かに一人暮らしは今後社会に出ることを考えても、経験しといて悪い話しではない。

寧ろ金銭的な生活水準を理解してれば、就職時の一つの基準にもなる。

加えて神楽坂さんからも、親など周りの目を気にせず学ぶことができる。

いや別にイヤらしい意味とかでは全くないが。



「良いかもな、けどどこの大学にするんだ?」

「それはこれから2人で探そ!」



一旦話しがまとまり、俺たちは帰宅して、お互いに調べ候補を出し合うことにした。

帰り際、神楽坂さんの提案でお互い名前呼びすることも決まる。



「またね智也君」

「あぁまたな、め、恵」



恵の頬は赤く照れ臭そうに口元を少し吊り上げ笑っており、俺も自分の頬が熱くなるのを感じ苦笑した。






それから帰宅し、自室で部屋着に着替えてから、身体をベッドに倒す。

今日は本当に疲れたな、これだけ精神的に疲れたのて、全国大会以来か。

それよりも大学かー、

父さんは県外の大学も一人暮らしも許してくれるだろうから、後は何処を受けるかだよな......。

スマホを持ち、重たい気持ちで調べようとしたとこ、恵からの着信音が鳴り響き、電話に出ると柔らかな声が聞こえた。



「ごめんね急に電話して」

「大丈夫だけど、どうしたんだ?」

「智也君と話したいと思って、いいかな?」

「いいよ」



お互い何が得意なのか、選択している授業は何かなど話し、お互い理数系が得意とわかり、それならと恵から県を2つ跨いだ先にある、とある大学がいいじゃあないかと提案され、すぐ調べてみるとテレビとかで見たことある大学だった。

更に詳しく調べ、俺は理数系の学科を受けることに決めた。

恵も同じように、理数系の学科を受けることし、勉強の日々が始まった。

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