第4話立候補

「先生その種目は私がやります」

 松本が立候補したのは二人三脚だ。

 二人三脚それは否が応でも男女二人が密着するので、この種目を選んでおけばまず間違いないだろう。

「分かった。女性は決まりだな。男は誰に「先生佐々木がいいと思う」」

 普段発言しない俺が発言したので周り中がガヤガヤした。 

「佐々木は大丈夫か?」

「僕は何でも構いませんけど」

 作戦通り。

 後の種目は適当に決まり放課後を迎えた。


「何とかなったわ」

 俺は部室で一人呟き一息ついた。

 廊下からけたたましい音が近付き勢いよい扉が開いた。

「大変です」

 松本が勢いよく入ってきたのだ。

「どうした?」

「佐々木さんが練習に来ないんです」

「んなもん知ら……」

 俺が言う事が分かるように松本の瞳にはうっすら涙がたまっていた。

「分かった。一緒に探すか?」

「はい」

 

 俺達は校舎内のありとあらゆる場所を探したが見つからない。

「いたか?」

「いません」

 あの野郎どこに行きやがったんだ。

 

 俺達は校舎内を飛び出したら近くのファミレスで、友達同士でお茶をしていた。

「おい佐々木ここで何してんだ?」

 俺と松本は佐々木の表情を見ている。

「お茶をしていたんだけど」

「練習はどうした練習は?」

「まだ日にちもあるし大丈夫かなと思って」

「松本はずっとお前を待ってたんだぞ」

「それは申し訳ない事をしました。すいません」 

「それじゃあ今から練習しろよ?」

「今はお茶してるからいいですよ」

「そうか」

 俺は納得し帰ろうとしたがすぐに、佐々木に振り向き顔面を殴った。

 テーブルに置いてあったグラスが地面に落ちファミレスの中にいる人がこちらを見ていた。

「何するんですか?」

「テメーの根性を叩きなおす」

 俺は佐々木の胸ぐらを掴み殴ろうとした瞬間、後ろから肩を掴まれ振り向くと顔面を殴られた。

「いっつー。何すんだテメー?」

「担任に向かって随分な口の利き方ですね」

「何でこんな所にいるんだよ?」

「担任ですから」

 担任はニコっと笑いこの騒動をおさめ俺達はファミレスを後にした。


「祐太暴力はよろしくないね」

 松本には帰ってもらい今担任と二人でいる状況だ。

「あいつがいけない」

「好きな人の事となると真剣になるのは分かるけど、もっとやり方を考えないと」 

「あいつが松本を悲しませたから」

「君が暴力を振るったら美咲はもっと悲しよ」

「ちっ」


 次の日、俺は佐々木の前で頭を下げていた。

「昨日はすまなかった」

 昨日の一件の事はクラス中が知っていた。

 佐々木と一緒にお茶をしていた奴が校内でいい振らしたのだ。

「大丈夫痛くなかったから。平山さんこそ痛くなかった」

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