第2話諦めきれん

「ちなみに誰なんだ?」

 俺は自分の恋が終わったのは知っている。

 だけどもしかしてって言うのがあるかも知れないから。

「同じクラスの」

 おい。

 これってまさか。

「佐々木誠一さん」

 完全に終わった。

 不良の俺でも分かる位『佐々木誠一』はイケメンで女に持て、性格も素直でいい奴だと聞く。

 女だったら誰もが好きになるタイプだろ。

「それじゃこれから先はお二人でよろしく」

 その言葉をいい残し部室を出ようとしていたので、俺は前に立ち進行を止めた。

「おいどこに行く気だ?」

「ここから若い人同士で頑張れ」

 俺は担任に睨みをきかしたが、そそくさと部室をでた。


 お互い正面に向かい合い時間だけが流れている。

 俺は不良。

 だから俺から話す事は絶対に有り得ないのだ。

「あのー?」

 俺は鋭い眼光を相手に向けた。

「すいません」

 別に怒っているわけじゃない。

 緊張するとどうしても顔が強張ってしまうのだ。

「何の用だ?」

「告白したいんですけど」

「………」

「あのー訊いてます?」

「聞いてるよ」

 俺はふと閃いた。

 告白の手伝いをしている様に見せかけて、実は告白を失敗する様に誘導しようと。

「佐々木とはどこまでいってるんだ?」

「話した事は業務的な事位です」

「そんな事で惚れるのか?」

「一目惚れです。私一目見た瞬間に胸が高鳴ったんです」

 俺と同じ気持ちになったわけか。

「作戦とか、俺初めての部活だからどうするかわかんねーぞ」

「とにかく私達三人は同じクラスだからいい雰囲気作りをお願いします」

「おう」


 次の日クラスに入ると松本は自分の席に着いていた。

 一方佐々木は仲のいい女友達と一緒にいた。

 相変わらず異性の友達が多い奴だわ。

 いい雰囲気って言ってもお前らの席後ろの一番端同士で関わる事何てないから無理じゃん。

 松本が俺にアイコンタクトを何回も送ってくる。

 可愛い。

 いかんいかんいかん。

 俺は不良何だ照れてどうする。


「おい佐々木?」

 俺は佐々木の元に近寄ると回りの女子達は逃げて行った。

「何ですか平山祐太さん?」

「随分と異性の友達多いな。彼女とかいんのか?」

「残念ながら彼女はいません」

 俺は感じた。

 その言葉を聞いたクラスの女子達が安堵の空気をだしていることに。

「でも」

「でも?」

「好きな人ならいます」

 クラス中の女子達が佐々木を見た。

 もしかして私なんかじゃないのかと。

 もちろん当たり前の様に松本も見ていた。

 ここまで松本から好かれているこいつを見ると、本当に羨ましいよ。

 だけど俺は絶対松本と佐々木が上手くならないようにしてやる。

 俺の為に。

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