第18話、粗忽な幽霊
むかーし、むかしのことじゃ
あの世のモノはな
肉体から魂が解放されて霊魂となるが
直ぐにはあの世には行けず
49日間、この世に留まって
この世の反省会をするらしいのじゃ
らしいと言うのは作者も
あの世に帰った経験もなく
記憶もないからである
この世に生きてる人の価値観は
そのままあの世に持ち帰る
例えば金や権力や物欲に執着ある魂
他人様を苦しめてきた魂
自己中心的な魂
多くの人の怨みの生き霊を背負って生きてきた者
あの世にも生前の行いに相応しい
自分にとっての心地良い地獄世界に
行き着くことになるのじゃ
自分と同じ属性、地獄界、餓鬼界、修羅界などな、人間界も苦だから地獄界の範囲に入っているじゃろうな
それとな、生前の魂にな
個性がある者もあの世に帰ってからな
もしかしたら、
もしかしたらじゃ
生前の個性をあの世に持ち帰ってな
自分にとっての相応しい世界に
行き着くかもしれんよな
それがいいかげんな性格ならばな
そういう者ばかりが周りに集まっている世界じゃな
馬鹿らしいけど心地良いよな
「なぁ権米よ、おめぇ本当に死んだんかや、ピンピンしてるっぺ」
「おら死んだっぺよ、海に落ちただ、そんな気がするっぺよ」
「そんな気がするって、おめー、気だけなら夢かも知れんぞ」
「そうっぺかな?」権米は考えても分からないから考えことを諦めた
「為やんよ、おめーは何で死んだっぺ?」「おらは、死んでないっぺ、」
「だったらなんでおらと会話してるっぺ?」「さぁ?」
「どうでもいいっぺ、めんどくさいことは考えないっぺ」
こんな具合である
「とりあえず飲むっぺ」
あの世の世界は思ったことが現実化する
酒が飲みたい、旨い魚が食べたいと
願えばすぐに出てくる
それでも酒を飲んでも酔えないし
魚を食べても幸せとは思えない
この世界は苦痛は一切なく幸せである
おそらく、この者達が行き着いた場所は
苦界ではなく天国に近い階層なのであろう、しかしストレスがない分、五感で味合う感動もない、だけど不満はない
いいかげんな魂が心地良いと感じるのは
一日中、ぐーたら出来る世界でもある
「あのー、もし、ここはどこなのでしょうか」品の良い娘が二人に聞いてきた
「うーん、ここはどこなんじゃろ」
「そうですか、私は確か体調を崩して久しく寝たきりだったのですが、いきなり
この場所に出てきて戸惑っております」
村人達はこの若い娘は自分が死んだことを理解してないと悟った
「どこが悪かったかや」
「わたくし心の臓に持病がありました」
「今はどうじゃ?」
「それが不思議に気分爽快なのです、
生まれて初めてかもしれません」
「娘っこや、おまいさんは苦痛から解放されて此処に来たんじゃ、もうええじゃろ、此処の生活を楽しめよ、な」
娘はニコッと笑って年相応な快活さを見せた
「そうですね、どうでもいいですね、
そんなこと、めんどくさいから!」
順応が早いというか
娘にも持って生まれた
いいかげんさが幸いした
「娘っこよ、おめえの名前はなんずら?」
「わたくしはサチと申します、サッちゃんと呼んで下さいませ」
一年に一回
お盆時期にあの世のモノがこの世に帰れる光の道が出来る
これは最近のことじゃ
はるか昔にはその道は無かった
この世に帰ることが出来るようにしたのはな
ある粗忽モノが
しょうもないことがをしたのが発端じゃ
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