第15話、小豆あらい5

「殿、怪しいものを捉えました」

家臣達は現代の鬼神である恐怖の大王

殿様に対して遠慮しながら申告しに来た

「嗚呼、そうか」

殿様はつまらなそうに答えた

自分は百姓を苦しめるこの世の憎悪を一身に背負った悪人らしい、儂は鬼らしい

どうでもいい、しかし何故、下の者がそんな事を伝えにきたのか不思議であった

「恐れながら其のモノが自分は山の怪異を知っているので殿に会わせろと言うのです。散々打ったのですがそのものはやはり不思議なモノで全く堪える様子もなく

しつこく殿に会わせろと云うのです。風貌は昔バテレンの邪教を広めようとした髪型をしておりますが、その顔には全く知性と云うものを感じられません。また恐らくバテレン信徒である百姓一人を連れて我が城に正面から乗り込んできた次第です。」

家臣は畏まり困り果てた状態であった

殿様は家臣が困っている相手に興味を持った

(儂の家臣達は殺気立つ鬼神集団、それをここまで疲労困憊させる相手は何者か)

(今更バテレンの教えを広げにやってきただと、面白い、会ってみようかの)


家臣達に通されることを許されて近づいてきたようだった


さっそくドタドタガヤガヤワーワーと煩い声が聞こえてきた


「いつまで待たせんねん!はやくオッサンに会わせろっていうてんねん!!」

「無礼者、殿のことをそのように呼ぶお前を今すぐにでも

たたっ切ってやろうか!」

その者と家臣の怒鳴り声が聞こえてくる

(ほう、儂のことをオッサンと呼ぶバカがまだこの世に居るとはな、

絶対に聖職者ではないな)

外から見える空は紅葉が彩を咲き誇り城内の喧騒とは全く別世界の様相であった。

漸く殿様の目の前に招かれざる得ない珍客2人が入ってきた


一人は見慣れた百姓の姿をした若い男

しかしこの者は儂を見ても恐怖感を抱いてなさそうだ。

(いい度胸をしておる)

(しかしあの顔は、やっぱり何も考えてない顔じゃな、、)

そして問題はもう 一匹

(これは、なんじゃ?)

殿様と太郎丸の目が合った

「お!?、オッサンついてるやんけ、河童妖怪様のワイを見て感動しとるな」


(こやつ、なんで言葉をしゃべるのじゃ、バチカンの妖か?)


「なんでゴキ虫が二本足で立って人語をしゃべるのだ?

やはりお前はバチカンの魔術を使う基督宣教者か

それにしても品が無いの、ブサイクじゃの、、」

それを聞いた太郎丸は直ぐに反応した


「誰がゴキ虫やねん!ワイは河童じゃ!!!」


後ろに立ってる若い百姓は欠伸をしながらめんどくさそうに喋った

「あのな河童!、おめーは妖怪力見せると言ったがよ

城正面から入って邪魔する者を相撲技のうっちゃりで投げ飛ばしただけだで!

おでもびっくりしてるだ、まさかこんなにバカとはな」

それを聞いて太郎丸は澄まして答えた

「腕力も妖怪力の一つじゃ」

それを聞いた平治はなんか腑に落ちない

他の水妖怪達は人間に妖怪の恐ろしさを効果的に与える演出で出現している

牛鬼に濡れ女、そして小豆あらい

なのにこの河童は只の力づくで人間を投げ飛ばして此処まで入ってきただけ、、、


太郎丸が思い出したようにいきなり殿様に噛みついた


「あ!オッサン、誰がブサイクやねん!!!」


太郎丸は反応が遅い

それは妖怪だからであるから、知らんけど!

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