第11話 水路散策
「ああ!?船を停めるだけで、20ゴールドだ?おいマルコ、俺はもう我慢ならねぇぞ。こいつ俺らを田舎者だと思って馬鹿にしてやがるぜ」
そう言って腰に差した剣を抜こうとする親友キースを私は慌てて静止する。
「ここらじゃ、この値段が相場なんだよ。もっと安い場所を探してるなら島の外れにでも船を回しな」
船着き場の管理をしている初老の男が面倒くさそうにキースの相手をする。
街中に水路が張り巡らされたベラルシーの水路の中でも、私達は目抜き通りのそばの船着き場に船を停めようとしていた。
きっと老人がいうように20ゴールドが相場なのだろう。
「高い、安いの問題じゃねぇよ。船着き場はみんなの場所だろ。一人占めして金取ってるんじゃねぇよ」
私達の故郷でのルールを叫ぶ親友は、やはりどこからどう見ても田舎者だった。
通りを行き交う人々の視線で私とシエルの顔が赤くなる。
肌の白いシエルは特にわかりやすく紅潮していた。
「もういいよキース、他の場所に船を回しましょ」
私がキースの両腕を抑えている隙に、シエルがさっと船を出す。
「離せよ、マルコ。もう暴れないから離してくれ」キースがもがきながら訴える。
「約束だぞ。キース、何があっても抜刀なんてしないでくれよ。ベラルーシにいられなくなる」
私がそう言うと、キースは悔しそうな顔で頷いた。
正気を取り戻したキースと私達は気を取り直して、水路の流れに船を任せて街を散策する。
この船での散策が最高だったので事細かに描写したいと思う。
水路に浮かべたボートのほどよい揺れと、
もぎたてのオレンジのような太陽の光が眠気を誘い、
眼前に広がるベラルーシの景色をどこかデイドリームのようなものにしてしまう。
眠気覚ましにと指先をエメラルドブルーの川につけると、
水面の美しさにはっとなる。
混雑し活気に溢れた通りの横の水路を、
私達の乗るボートが素知らぬ顔で流れていく。
長い石造りの橋の下をくぐると、
大きなマーメイドの石像が現れる。
そのマーメイドが持っている杯から水が湧きあがり、
私達のボートが浮かんでいる水路に湧水が落ちていく。
それを上手く躱して振り返ると小さな虹がかかっている。
他の船乗りとすれ違い、
「おい、左通行だぞ」と教えてもらう。
すっかり機嫌のよくなったキースが「ありがとう」と言って手を振る
私達の眼前に登り坂になった水路があらわれる。
私は引き返そうかと思ったが、
なんと私達の前を行くボートがその水路を登って行く
私達もそれに続いていてみる。
すると私達のボートも登って、
三人の「おおっ」と言う歓声があがる。
以上がベラルーシの水路散策の記述である。
私の拙い筆ではこれが限界なので、興味のある方は是非、直接行ってその目で見て欲しい。
そうそう後で聞いた話なのだが、ベラルーシの水路には大魔導士【ルカ】の魔法がかけられているらしい。船が坂を上るのもそれなら納得である。
私達は水路に流され、ベラルーシの外れに来ていた。
街の中心街とは違い下町のような雰囲気のある場所の船着き場に私達は船を停めた。
「船を停めるなら、一泊1ゴールドだ。」
眼鏡をかけた白髪、白ひげの船着き場の管理人が言う。
「そいつは安いな。」キースが調子のいい声で返す。
「おまえら今晩の宿は決まっとるのか?決まってないなら、うちの宿に泊まっていきな。船の停泊代込みで安くしといてやる。一人5ゴールドでどうだ?」
管理人が私達の船をロープで桟橋に繋ぎながら言う。
長旅で疲れていた、私達は顔を見合わて頷く。
どうやら今晩は久々にベッドの上で眠れそうだ。
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