第7話『そのまんま月の砂漠』
月にほえる千年少女かぐや(改訂版)・7『そのまんま月の砂漠』
大橋むつお
時 ある日ある時
所 あるところ
人物 赤ずきん マッチ売りの少女 かぐや姫
かぐや: 先生がまだほんのお子様のころ、お母さまが内職のミシンをふみながらよく歌ってらっしゃったんですって。お母さまが、この歌を口ずさまれるとそれだけでね、六畳一間のお部屋が月の砂漠になったんですって。ほほほ、おわかり?
赤ずきん: わかったような……
マッチ: わからないような……
かぐや: 先生はね、月の光に照らされた砂漠じゃなくて。そのまんま月の砂漠とお思いになったんだって。
赤ずきん: え?
マッチ: ん?
かぐや: で、どうして空気のない月の砂漠を王子さまとお姫さまが、ラクダに乗っていけたんだろうって……
二人: あははは……
かぐや: でも、すてきじゃございませんこと……お母さまのお歌一つで六畳のお部屋が月の砂漠になって、畳のへりを、小さな王子さまとお姫さまがラクダにのっていかれるなんて。
赤ずきん: でも、それがどうして鳥取砂丘?
かぐや: 学生のころに鳥取砂丘でラクダのりのアルバイトをなさってたの。それで、月の砂漠はここだってお思いになった。はじめて砂丘をごらんになったとき、ミシンをふむお母さまのお背中と、月の砂漠がパーっとスリーディーの映画のように、よみがえったとおっしゃってました。
マッチ: ふうん……いい話だよね。
赤ずきん: でも、この家は金八郎にがてなんだろ?
かぐや: せっかちのエンジン全開でいらっしゃいますから。
マッチ: だよね。
かぐや: 一時間……いいえ、正味四十八分で、問題を解決しなきゃいけませんでしょ。スポンサーやディレクターのご意見もございます。ムリもございませんわ。
赤ずきん: だろうね……
マッチ: 波の音がする……
赤ずきん: ほんとだ。
かぐや: そりゃ海岸ですもの……海と、月と、砂丘と……ぜいたくでしょ、ここ。
マッチ: あ、うさぎさんだ!
赤ずきん: え、どこ?
マッチ: ほら、あそこ。あの砂丘のかげ。
赤ずきん: ……ほんと!
マッチ: おっこっちゃったのかな?
赤ずきん: 月から?
かぐや: ほほほ、わたしもそう思って、思わず月を見上げましたわ(三人月を見上げる)ほら、ちゃんと月ではうさぎさんが、おもちをついていらっしゃるわ。
赤ずきん: ……ということは、ただのうさぎ?
かぐや: いいえ……あの方は由緒正しいうさぎさんなのです。
マッチ: ほんとだ、腰に手をあてて胸をはっている。
赤ずきん: セーラームーンか!?
マッチ: ちょっち古いよ。
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