第5話『か弱い乙女ですもの』


月にほえる千年少女かぐや・5『か弱い乙女ですもの』



時   ある日ある時

所   あるところ

人物  赤ずきん マッチ売りの少女 かぐや姫




赤ずきん: ひょっとして、その金八郎がいやで学校に来ないの?

かぐや: ほほほ、それほどヤワじゃございませんわよ。

マッチ: あの……わたし、かぐやさんにいろいろグチこぼしたじゃない。

かぐや: お互い、か弱い乙女ですもの、グチのひとつやふたつ。

マッチ: うん……かぐやさんとか、赤ちゃんとか、しゃべりやすくって……

赤ずきん: ほんとか?

かぐや: ほほほ……わたしの方こそいろいろ教えていただいて……それに、マッチさんのお話って、おっしゃるほどグチっぽくなくてよ。

マッチ: そう!?

かぐや: そうよ、いろんなことをおもしろおかしく話してくださって。赤ちゃんさんのこと、郵便ポストさんとかサンタさんのお嬢さんとか。

赤ずきん: え、あれマッチが。おまえなあ……!

マッチ: あの、それはね……

かぐや: 赤は情熱、ぬくもりの色よ。マッチさんの赤ちゃんさんへの好意がよくあらわれてますわ。


赤ずきん そ、そう?

マッチ: そ、そだよ。あの、これ、ケーキつくってきたの。みんなで食べようよ。

かぐや: まあ、かわいいケーキ。赤いサンゴの色のようね。

赤ずきん: それ、トンガラシクリーム。最初甘いけど、飲みこんでから、おなかの中でヒリヒリすんだぞ。

かぐや: まあ、ほんと!?

マッチ: うそ、普通のイチゴクリームだよ。

赤ずきん: うちのオオカミさんに食わしたら、胃ケイレンで、そく救急車。

マッチ: もう、赤ちゃんたら(ぶつかっこうをする)

赤ずきん: なんだ、やろうってのか?

マッチ: や、やるときゃ、やるわよ! いつも負けてばっかじゃないかんね!

かぐや: あらら……

赤ずきん: いくぞお……

マッチ: こっちこそ……

ふたり: さいしょはグー、じゃんけんポン!

マッチ: うう、三回しょうぶ!

赤ずきん: おうよ!

ふたり: じゃんけんポン! じゃんけんポン!

赤ずきん: あはは……

マッチ: おっかしいなあ、どうして負けるかなあ?

赤ずきん: おしおきだぞ~…… 

マッチ: え……?

赤ずきん: こちょこちょこちょ(くすぐりまくる)

マッチ: きゃははは……死ぬう!

赤ずきん: まいったか。

マッチ: まいった、まいったよ~。

かぐや: ほほほ、笑いは最高の調味料。おいしいわ……

赤ずきん: そのレターセットかわいいね。彼氏に?(コンビニの袋のレターセットに気をとめる)

かぐや: オオカミ男さんがね。時々おたよりをくださるので、お返事を出そうかなって思って……


マッチ そうか~、満月のたんびに月に吠えていたのは、かぐやさんへのラブコール!

かぐや: さあ……どうでしょう……もう少し複雑なお気持ちなのかも……

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