第4話『かぐやさん!』


月にほえる千年少女かぐや(改訂版)・4『かぐやさん!』


大橋むつお




時   ある日ある時

所   あるところ

人物  赤ずきん マッチ売りの少女 かぐや姫




下手から、コンビニの袋を持ってかぐやがやってくる。


かぐや: あら、わたくしに御用?

赤ずきん: あら。

マッチ: かぐやさん!

かぐや: マッチ売りの少女さん……と、こちらは……郵便ポストさん?

赤ずきん: あのね……

かぐや: あ、サンタさんのお嬢さん。お父さんのお手伝い?

赤ずきん: そのね……

かぐや: 知ってるわ、赤ずきんちゃんさんでしょ? 生徒会長さんですよね。どうぞ中へ。きたなくしてるけど、お茶でもいれましょう。

マッチ: わたしたちね、呼び方かえたの。赤ずきんちゃんとか、マッチ売りの少女とか、長くて呼びにくいから。わたしはマッチで……

かぐや: まあ、かっこいい。赤ずきんちゃんさんは?

赤ずきん: それがね……

マッチ: 赤ちゃん!

かぐや: まあ、かわいい! じゃ、わたしもそう呼ばせてもらっていい、赤ちゃんさんて。

赤ずきん: さん抜きでいい。

かぐや: そんな不しつけな。わたしは「さん」をつけさせていただきます。いいでしょ?

赤ずきん: ま、いいけど……

マッチ: こないだも来たのよ、金八郎先生といっしょに。

かぐや: まあ、そう。それでね……このお家が急にお散歩に出かけてしまったのは……

マッチ: ああ、やっぱりお散歩だ。

かぐや: はい。このお家、すききらいがはげしいんですぅ。

赤ずきん: きらいなのか、この家?

かぐや: にがてなんですの。熱心でいいお方なんですけど……むき出しでいらっしゃいますでしょ、いつもエンジン全開で……

赤ずきん: あたしも元気な方だけど、それでも持てあましちゃうもんね。

かぐや: どうぞ……(お茶を出す)あの先生悪いかたじゃございませんのよ、ご兄弟もいい方ですし。

マッチ: 兄弟いたの?

かぐや: はい、お兄さんたちとは古いおつきあいよ。

赤ずきん: お兄さん?

かぐや: 金太郎さん。動物好きの、マッチョだけれどもおだやかなお方。その下が金二郎さん。いつも柴を背負って、お勉強ばかり。その下は早くに亡くなられたけど。四番目が金四郎さん。桜ふぶきで入れ墨がとってもおにあいのナイスガイ。以下省略。

赤ずきん: どうして、あの先生この世界にいるんだろう?

マッチ: あ、さっきのわたしの質問!?

かぐや: それは……あの先生のおつむりの回路がメルヘンみたいだから……でも本当のメルヘンて……よしましょう、こんなヤボな話は。

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