第3話『家がない!?』


月にほえる千年少女かぐや(改訂版)・3『家がない!?』


大橋むつお




時   ある日ある時

所   あるところ

人物  赤ずきん  マッチ売りの少女  かぐや姫




赤ずきん: 家がない!?

マッチ: うん、住所もあってるし、そこにちゃんと一軒分の土地もあるんだけど……家がないの……ひょっとして、家ごと散歩してたのかな……?

赤ずきん: そういうこともあるかな……って、んなわけないだろ!

マッチ: だって、そうなんだもん。金八郎先生スマホのナビでなんども確認してたもん。ほんとだって。

赤ずきん: ドロシーんちみたいに風にとばされたってのはあるけどよ。

マッチ: ほんとだって。ほら、これがそんときの写メ。

赤ずきん: え……あ、ほんと!?

マッチ: こんなのもあるよ。

赤ずきん: あははは、金八郎のびてやんの。

マッチ: 必死にさがしてるうちにパニくっちゃって、電柱に頭ぶっつけたの。介抱すんのたいへんだったんだから。どう、信じてくれた?

赤ずきん: まあ、家がないってのはな。ファンタジーの世界はなにおこるかわかんねえからな。

マッチ: さすが赤ちゃん。のみこみが早い!

赤ずきん: 金八郎ほど頭かたくねえからな。

マッチ: 金八郎先生は人間なのに、どうしてこの世界にいるんだろう?

赤ずきん: ま、そういうこともあるよ。逆の場合もあるしね、鬼太郎の場合とか……

マッチ: あ、鬼太郎さんのチャンチャンコってかっこいいよね!

赤ずきん: どこがよ。あの遮断機のダンダラもようみたいなのが!?

マッチ: だって……

赤ずきん: だいたい、おまえの趣味はな……

マッチ: あんたじゃないよ、マッチだよ。赤ちゃんが決めたとこじゃないよ。

赤ずきん: ガルル~!

マッチ: あ、オオカミさんだ!

赤ずきん: いちいちひとのあげ足とんな!

マッチ: ごめん。 

赤ずきん: マッチとあたしは似たキャラだけど、どうしてこうもちがうんだろうね。持ってるバスケットだって、あたしのは四角くて実用的だけど、マッチのは丸っこくて使いにくそうじゃん。 

マッチ: だってこのほうがかわゆいもん。

赤ずきん: あ、それってあたしがかわいくないってことか?

マッチ: そういう意味じゃないよ。

赤ずきん: じゃ、どういう意味だ?

マッチ: それは……

赤ずきん: だいたいな、マッチすりまくって凍え死ぬってのが、お涙ちょうだいのナルシスチックで、やなんだよな。

マッチ: しかたないよ、アンデルセン先生がそう書いてるんだから。

赤ずきん: 先生のせいにするかあ? なんだか今どきの高校生みたいだぞ。

マッチ: あ、今日はちゃんと家があるよ(^_^;)!

赤ずきん: うまいタイミングで見つけるもんだなあ。

マッチ: もう~!

赤ずきん: こんどは牛かよ。家がお散歩してたってのは、ほんとみたいだな。

マッチ: でしょ。

赤ずきん: さ~て、本人がいるかどうか……(ドアベルを鳴らす)ほらな、留守みたい。

マッチ: ごめん、無駄足だったかな……

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