第7話 追加規約
そして二日目である。
登校にも朝食にすら早い時間に叩き起こされた敦盛は、珍しく制服姿の瑠璃姫を目撃する事となった。
「今日はテストだったか?」
「普通の授業の日よ」
「…………俺はまだ寝てるのか、起こすときはノーパンノーブラで媚び媚びにしてくれ」
「アンタをノーパンノーブラで登校させるわよ?」
「…………」
「いやなんで黙ったのよ?」
「――――うええええええええええええッ!? 瑠璃姫がこの時間に起きてるううううううううッ!? 遅刻かッ、遅刻だなッ!? それとも雪か畜生ッ!!」
「馬鹿ね、昨日アンタの身に何が起こったかよーく考えてからモノを言いなさい。ボーナス無しにするわよ」
「ボーナスあるのかッ!? いやっほおおおおおうッ!! この世の春じゃッ! こんなチョロい奴の性奴隷になるだけの仕事でボーナスなんてこの世の春じゃッ!!」
「ボーナスカットね」
「なんでッ!?」
「いや分かれよ理解しろよおバカっ!? アンタはアタシに絶対服従のペットでしょうがっ、なに朝っぱらからご主人様ディスってんのよっ! というかソレよソレっ! 追加で十万上乗せしてあげるからルール追加させて貰うわよっ!!」
ウキーと叫んだアルビノ美少女、制服をムチっと盛り上げる胸ときゅっと締まった腰、スカートをさりげなく押し上げる臀部が大層魅力的ではあるが。
「ルール追加は良いが、ちょっとこの紙袋を被って三十分程、雌豹のポーズしてくれねぇかご主人様?」
「誰がするかっ!! というか紙袋にあの子の写真貼ってるんじゃないわよっ!? そういう所よホント、マジそういう所がアンタがクラス非モテランキングトップなのよっ!」
「俺知らねぇよそのランキングッ!?」
思いもよらない情報に、敦盛は目が飛び出る程驚いた。
そんな彼の姿に、瑠璃姫は冷たい視線で言い放つ。
「だってクラス女子オンリーのライングループの話だもの、知ってる方がキモいでしょ」
「つまり俺は今この瞬間、キモくなった?」
「最初からキモいからトップから殿堂入りになっただけよ、ちなみにアンタが好きなあの子は言うまでもなくクラスの女子全会一致だったから」
「ふぇぇ……、もう学校いけないよぅ…………」
「そ、じゃあ登校する時はアタシの鞄持ってね」
「そこは幼馴染みとして、大丈夫おっぱい揉む? っって優しくしてくれるシチュじゃねぇの?」
「好感度が足りないわね、――じゃないわよ、話を戻すわよ。着替えながらで良いから聞きなさい」
「あ、マジでルール追加すんのな」
すると彼女は、額に青筋を立ててギロっと睨んだ。
この幼馴染みは昨日の出来事を忘れてしまったのだろうか、ペットという名目とはいえ就職したのを忘れているではないだろうか。
「追加しないとアンタ絶対ルール悪用するでしょ、というか仕事舐めてるの? 昨日サインした書類は弁護士にも監修して貰ったマジモンよ、アタシのさじ加減一つで懲戒免職からの裁判で借金倍増まで確定なのは心しておきなさい」
「そこまで確定ッ!? ……――しゃーねぇ、金の問題だもんなぁ。じゃあ着替えるからそこのパンツ取ってくれね?」
「ああコレ? ――って、アタシのパンツじゃないっ!? くのっ! くのっ! くのっ!! 地獄に堕ちなさい何時盗んだのよっ!?」
「いやテメー昨日忘れていっただろ、ご丁寧にパンツ二枚履きしてやがって男心舐めてるのかッ!!」
「二枚履いてて正解だったじゃないっ!! というかその場で返しなさいよ変態っホント信じられないっ!? 変なことに使ってないでしょうねっ!?」
「あー、メルカリの出品は取り消しておくわ」
「もしもし警察ですか?」
「困ります困りますご主人様ッ!? あー、困ります、小粋なジョークだったんです、何でもするから許してチョンマゲッ!!」
器用にも制服を着ながら土下座する敦盛、床でもぞもぞと蠢く姿に瑠璃姫は頭が痛くなってきたが。
何はともあれ、言うべき事は言わなければならない。
彼女はビシっと指さして叫んだ。
「追加項目第一条っ!! アタシにガチ恋禁止!」
「いやそれは無い」
「追加項目第二条っ!! アタシを犯したら裁判と賠償コース!!」
「ば、馬鹿な……、エロい事して主従逆転するという完璧なプランがッ!? 俺の自慢のチンコの出番はッ!?」
「んなもん来世でも無いわよ追加項目第三条っ! アンタが恋愛したり結婚するのは自由っ!!」
「つまりお前に惚れなければ良いと? 簡単じゃねぇか」
「昨日アタシを犯そうとしたのは誰だったかしら?」
「いやアレはあくまで電マで責めるだけの予定だったから、そもそも幼馴染みじゃん俺ら。ガチ恋とか肉体関係とか対象外だろお互いにさ」
「後半は同意するけど前半に関してはアンタの脳に問題あるんじゃない?」
「そうか? 女の子に電マ使ってみたいという全国の高校生男子の夢を叶えようと思っただけだが?」
「捨ててしまえそんな夢っ!! ともかくっ、アンタはアタシにぎゃふんと言ってれば良いのよっ!!」
「ぎゃふん」
「心が籠もってない」
「かー、残念だなぁおっぱい見せてくれたらぎゃふんって心の底から言うんだけどなぁ、残念だなぁ!!」
「くぅ~~~~、この駄犬がっ」
余裕綽々の敦盛に、悔しがっていた彼女は次の瞬間ガラっと雰囲気を変えて。
彼がそれを不思議に思う前に、ワイシャツの胸元の釦を外し始めた。
「…………瑠璃姫? いったい何をしてるんだ? まさか本当に?」
「ふふっ、後悔するのはアンタの方よ心の底からぎゃふんと言わせてやるんだから」
「え、ええっ!? もうブラもお腹も見えちゃってるぞッ!? これは俺得展開ッ!?」
敦盛の熱い視線が瑠璃姫の白い肌、胸の谷間に突き刺さる。
それを誇らしそうに笑い飛ばしながら、彼女はぺろりと舌なめずりして。
「ねーえーあっくん? アタシお腹空いちゃったぁ……、今すぐフレンチのフルコース作ってぇ」
「お、おっぱ胸ェッ!? お、おおお、おっぱああああああッ!?」
「作ってくれたら、ご褒美……あ げ る」
「ご褒美は先払いで良いで――――はぅあッ!? そういう事かガッデムッ!?」
「何の事かしら? ね、あっくん、ふふっ、ベッドの上で耳元で愛を囁いて欲しい? それとも……アタシを押し倒しちゃう?」
「ぬあああああああああああああッ!? ド畜生オオオオオオオオオオオオオッ!! 追加規約はこれが目的かッ!? 生殺しじゃねぇかッ!!」
妖艶に誘う処女に、しかして手を出してはいけないルールと状況に。
敦盛は為す術なく股間を堅くするだけであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます