#087 家無き9人
「「よろしくお願いします」」
「……こ、コチラこそ、よろしく」
人数に戸惑いながらも俺は、リリーサ様が保護した女性9人を出迎える。
・グループ①、農家の3姉妹。両親は騒動で他界している。頼れる親戚もなく、身売りの話が出ていたところをリリーサ様に引き取られた。
エスタ:長女、17歳。騒動の際に事故で両足を負傷してしまい、右足は切断済み。左足は辛うじて動くものの不自由な状態。職業経験は、村の食堂で2年間給仕をしていた。
ユノ:次女、15歳。魔物に襲われた際の傷痕が体のいたるところにあるが欠損は無し。家事手伝いのみで、社会経験は無し。
セレス:三女、13歳。両親や次女のおかげで目立った外傷はないが、精神的なダメージが深刻。家事手伝い、社会経験なし。
・グループ②、商人の娘たち。①同様に欠損などの理由で引き取られた。
セルピナ:農業用品店の娘、16歳。魔物に足を噛まれて、右足が不自由になっている。幼少期から家業を手伝っていた。
ディータ:宿屋の娘、16歳。村1番の美人としてモテていたらしいが、騒動の際に起きた火事に巻き込まれて顔や体に火傷の痕が残った。甘やかされて育ったこともあり、職業経験は無いも同然。
メティス:雑貨屋、16歳。雑貨屋に嫁いだが、騒動で夫と店を失った。職業経験は見習い程度。
・グループ③、同じ村民だが、畜産業や猟の関係で村の(防護柵の)外で生活していた者たち。
レア:畜産家、19歳。騒動が起きた際は村外に出ていたが、代わりに家族や家畜を同時に失った。嫁ぐ前から畜産家の家で育ち、知識は豊富。しかし、再度畜産を志す気力は失っている。
ミネルバ:父親は警備隊、母親は服の仕立て屋、15歳。男勝りな性格で剣をとって自身も戦い、籠城の末なんとか1人生き延びた。全身に傷痕多数。回復後は冒険者志望。
ティアナ:猟師の娘、15歳。危険を察知した両親に、村に避難するよう指示され助かる。弓の名手と言われていたが、避難の際の負傷で利き手の握力が戻らず、現在は戦えない。回復出来れば冒険者志望。
村は壊滅したが、避難して助かった者もそれなりにいる。現在は領主の指導のもと、再生計画が進行中。
身寄りを失った未成年の者は、村や領主が引き取る事となった。(1人例外アリ)リリーサ様は、20歳以下で行き場の無い者を引き取る事となり、それが上記の9人であった。
「それじゃあ、相部屋で悪いけど、部屋に案内するね」
「「お願いします」」
先生の案内で部屋へ向かう9人。仕方の無い事だが、その顔色は優れない。
因みに部屋は、最高4人の相部屋で、グループごとに割り当てている。宿泊費などは確りリリーサ様から貰っている。ゆくゆくは黒字化して、代理人のA子から支払いを受ける話になっている。
「キョーヤさん、例の機材が届きましたよ」
「あぁ、ベールさん、助かります」
鍛冶師ギルド経由で大量の物資が運び込まれる。家財道具もそうだが、労働力を得た事でかねてより計画していた金策を実行に移せる。
もちろん彼女たちは、程度の差こそあれ心に深い傷を負っている。しかも、魔物被害の被害者をダンジョンに連れてきているのだ。とても『魔物を狩って稼げ』とは言えないが、出来る事を見つけ、少しずつ前に進んでいくしかない。
「いえいえ、コチラも最新鋭の機材を買ってもらっていますから、これくらい当然ですよ」
そう言って次々と物資が搬入され、設置作業が進められる。これらの品はいわゆる"業務用"であり、どれもなかなかのお値段だ。しかし、そこは妥協せず良いものを購入する。費用は全部"俺持ち"となってしまうが…………最初に設備投資をケチると、それだけやれる事も限られ、埋没したりマネされたりしてしまう。
「そう言えば"販売網"の話は、どうなりました?」
「一応手配はしていますけど、食品は専門外なので…………正直に言って手間取っていますね」
「そうですか……」
「それなら、"私ども"のツテを使うのはどうでしょう?」
音もなく現れ、話に入るのはルリエスさん。私どもと言うと、ニラレバ様と言うよりは、丼家の方なのだろう。
「食品なんて、取り扱っていたんですか?」
「はい。上にある(ニーラレイバ様が利用している)飲食店も、パルトドン家の息がかかっています」
「「あぁ~」」
言われてみれば確かに納得だ。いくら裏で稼いでいると言っても、それだけで毎日の豪遊費用を賄うのは難しいはず。飲食費などは特別な割引があるか、あるいは本家が払っているのだろう。
「それじゃあ、お言葉に甘え"まくって"、もっとお願いしてもイイですか?」
「はい?」
予想外の返答に口元を引きつらせるルリエスさん。
「いや、別に無茶な事を言うつもりは無いんですけど…………考えている金策の
考えている食品の金策は、ルビーに教えて貰った"ゴート料理"だ。もちろん、これはそれなりに美味しく、売れるものだが…………それだけではパンチが弱い。何より、こちらも置かれている状況が特殊なので、デメリットを上手く補い、更には利用して金に換える
こうして、恵まれない女性たちの力を借りる形で、俺の新たな金策は始動する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます