#049 異世界の裁判
「早く渡して、メシにしようぜ!」
「ちょ、ルビー、勝手に」
今日も狩りを終え、ギルドに戻ってきた。今日はABとの約束の日。この後、2人に会わなければいけないと思うと…………突然、用事を思い出してしまいそうだ。
「キョーヤさん、大変です! 召喚勇者の方が警備兵に連行されました!!」
時すでにお寿司。俺は掛け替えのないクラスメイトを助けることは出来ませんでした。 -完-
「って感じで、終われたらいいんですけどね」
「はい? いえ、それどころでは!? 今、ギルドマスターが詰め所に呼ばれていて!!」
「やっと見つかった! 大変なんだ、信二たちがパクられた!」
「恭弥、もう頼れるのはアンタしかいないんだ!」
「…………」
ノルンさんの陰から現れたのはAとB、そして必殺の美穂までやってきた。一応、言葉は発していないようだが…………そういう意味じゃないんだよな。
「このままでは、"裁判"になってしまいます!!」
「
「「面目ない」」
こんな事態を回避するために2人を情報屋として雇っていたのだが…………結局2人も、危機意識の欠落した
「ルビー!」
「おう!」
「
「へへ、任せとけ!」
ルビーには100万が入った財布を丸ごと渡して、情報収集に走らせる。もちろん無駄になるかもしれないが、それでも今は手持ちのカードは少しでも増やしておきたい。
「イリーナ!」
「はい!」
「ウチに戻って先生と博士を呼んできてくれ」
「それは!?」
「え? その……」
思わず声を上げたのは美穂だった。言わんとすることは分かる。この事を先生に伝えれば、間違いなく再度引き籠る事になるだろう。
「構わん、行け!」
「はい! 直ちに!!」
悪いが俺はアニメの主人公と違って、都合よく秘密主義に走ったりはしない。確かに秘密裏に事態を解決すれば、先生は傷つかずに済むし、何故かそこからホレられる流れになるのだろう。しかし俺は、そんなご都合補正は持ち合わせていない。
凡人の俺に出来るのは、"最悪"を回避するために、犠牲を出してでも"安定解"を選ぶ事、それだけだ。
「ノルンさん、
「それは、いいですけど……」
プレイヤーズに限った話では無いが、人は判断に悩む事態に直面すると、楽観的で自分に都合のいい解釈をとろうとする。この事件の根底は、CとDの『このくらいなら大丈夫だろう』という"甘い考え"が原因であり、それは"知識"の無さが起因している。だからその辺の事情を3人に教え込み、そして勇者寮に持ち帰ってもらう。
「俺は、ニラレバ様のところに行ってきます」
「……お気をつけて」
裁判となれば、最低1人は貴族に立ち会ってもらう必要がある。そしてユグドラシルに居る貴族は1人だけ。間違いなく使者がニラレバ丼を訪ねるだろうし、上手くいけば情報や協力も取り付けられる。
正直、こんな事で借りを作るのは不本意だ。どうせ作るなら…………『CとDを今すぐ暗殺してください』みたいな内容の方が。
……………………
…………
……
えっと、とりあえず、時間もないので各々が出来る事をして、準備を整える。何せこの世界の裁判は、地球の裁判とは全く違う。
①、まず開廷が異常に早い。裁判官や貴族の都合がつけば即開催。場所も公開性なので、"明日中"には広場に特設会場が設置されるだろう。
②、弁護人が居ない。弁護士にあたる人が裁判官であり、その采配を監視・承認するのが立会人である貴族の役目になる。つまり、容疑者・被告人共に味方になって弁護してくれる人がおらず、互いの主張を公平な立場から判断する形式なのだ。
③、即日判決が下る。開廷の速さもそうだが、この世界の裁判はマジックアイテムを用いて"記憶"で判断する。だから速さが命であり、証拠集めや審議に時間を取られない。
そう、裁判は伝心の指輪の上位版のマジックアイテムで、記憶と証言を照らし合わせながら行われる。つまり『高性能の"嘘発見器"を持ってして被告・容疑者・証人の意見を纏める形で判断される』のだ。だから偽証は不可能であり、充分な証言が集まれば"証拠無し"でも即日採決が下る。
多分CとDは、『証拠が残らなければ……』などと考えていたのだろう。いったい何をヤラかしたのかまでは分からないが、元々、何かあれば『1度奴隷にして、保釈金を払う』形で解決をはかる取り決めだった。その工程をすっ飛ばして裁判沙汰になったと言う事は、"死刑"相当の判決を下す可能性があったためとなる。
そんなこんなで、裁判は予想通り翌日の夕方に開廷され、問題が無ければその日のうちに裁決が下る事となった。
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