#024 シルキー
「よし、これなら充分"剣士"を名乗れるだろう」
「ありがとうございます!」
俺は冒険者ギルドで、グスタフさんと手合わせして"剣士"の称号を得た。これは冒険者として『一定以上の剣技を習得している事を証明する』ものであり、一部のクエストの受注条件となっている。
本来、剣術は戦士ギルドの管轄であるものの、残念ながらダンジョン内に支店は無く、召喚勇者はダンジョン外へ出る事を許されていない。よって、自力で剣技を習得して、資格を持つグスタフさんに認定だけしてもらった形だ。
「そうだ、折角なので1つアドバイスをしておこう。スキルは発動の前後に僅かな"隙"が生まれる。キミはスキルを過剰に多用する傾向があるから、その隙には注意するように」
「はい、ありがとうございます!」
関係ないが、試験は小説のように『試験官を倒せたら合格』みたいな力任せな内容では無い。剣士の試験なら、剣技を問われるので、たとえ幾ら強くても剣"技"が出来ていなければ不合格となる。
また、イキって"力"をひけらかすのも減点対象だ。可もなく不可も無く、粛々と技能を示し、信頼と実力を証明する事が何よりも重要なのだ。そうでなければ、実力を保証しているギルドの顔に泥を塗ってしまう。
*
「ご主人様、お疲れ様です。ちょうど今、鍛冶師ギルドの方が来ていて……」
試験を終え、ギルドのロビーに戻ると、イリーナの隣に銀髪の少女が"白い包"を抱えて佇んでいた。
「あぁ、注文していた装備ですか? すいません、わざわざ」
「丁度用事があったので、お構いなく」
・追加装備
武器:ウォーハンマー(改)。戦闘用の槌。ヘッドは比較的軽量で、警棒の先にハンマーヘッドを取り付けたような形状になっている。携帯性に優れ、攻撃力が低下しにくい。
あと、この子は先ほどからイリーナばかりを見ている。体格も似ており、何より耳が尖っている。これは精霊種を象徴する特徴であり、僅かにドワーフの血が入っているイリーナに何か感じるものがあるのだろう。
「おぉ、流石はベルンドさん。適度な重量感とバランス、それにグリップも手に馴染む」
「それで、この方がベルンド様の娘の"シルキー"様で……」
「シルキーでいい」
ベルンドさんとは、俺が装備を注文している鍛冶師の名だ。それなりに名の通った鍛冶師らしく、娘もギルド員として働いている事は聞いていた。シルキーさんは、見た目こそ"少女"だが年齢は多分年上なのだろう。
「ですが私は奴隷ですので」
「シルキーでいい」
「流石に呼び捨ては……」
「シルキーでいい」
圧倒的、同調圧。見た目に反してグイグイくる。いや、それだけイリーナに"感じるもの"があるのだろう。ここはご主人様として、助け舟を出さなくては。
「それじゃあ、間を取って"お姉ちゃん"と呼ぶのはどうだろう?」
「どこの"間"をとったら、そうなるのですか!」
「問題ない。それで」
「ですが……」
「それで」
まぁシルキーさんは幼く見えるので、お姉さん風を吹かせたいだけかもしれないが。
「ご主人様……」
「いいんじゃないか? 何となく同じ気配を感じるし"同胞のよしみ"って事で、親しくしておけ」
これでは美穂の事をとやかく言えないが、俺が知る限り(エルフ系はそこそこ見かけるが)ドワーフ系種族は
あと、鍛冶師のコネも、あって損は無い。
「それでは、その…………お姉様で、お願いします」
「最高」
俺的には"尊い"って感じなので、ここは空気を読んで極力間に割って入らないようにする。俺は、そっちの作法も心得ている男だ。
「それで、シルキー様は……」
「お姉ちゃん」
「シルキーお姉様は、新しく出来る"
「あぁ、貸工房の隣の」
話を聞けば、どうやら店頭に立つのは他のギルド員らしく、シルキーさんは『ベルンドさんの代理』であり、オーナー兼エリアマネージャーみたいな役職のようだ。
「今までは、冒険者ギルド経由で注文していましたが、今度からは
貸工房は、鍛冶師ギルドの管轄施設ではあるが、貸しと言うだけあって鍛冶師不在のレンタルスペースだ。そこに正規の職人が在中するようになるのは、俺としても得るものがある。
「特殊なマジックアイテムも取り扱うので、ご贔屓に」
「それは助かります。あ、そうだ!」
「「??」」
「引っ越しなどで何かと大変でしょう。なぁ、イリーナ!」
ポンと、イリーナの肩に手をそえる。
「……はい?」
「そう、大変」
ポンと、シルキーさんがイリーナの空いた肩に手をそえる。
「えっと…………お手伝いしましょう、か?」
「大歓迎」
「それでは、イリーナをお任せします」
「え? 私だけですか??」
「私だけです。大丈夫、俺は理解のある男だから!」
「大丈夫。お姉ちゃんに全て任せて」
「え? えぇ??」
こうして俺は、華やかな気持ちでイリーナを
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