#005 ギフトスキル③

「今日も空いているなぁ」


 やってきたのは11Fの草原エリア。第二階層は稀に"そこそこ強い"魔物が出現するようになる。しかし第一階層同様に、その中途半端さから滅多に冒険者が来る事は無い。そんな訳で、貸切状態で試し斬りに挑む。


 目を閉じ、<疑似世界>のもう1つの能力を起動する。



・追加技能

スラッシュLv3:斬撃強化スキル。

ストライクLv1:刺突強化スキル。

ソードパリィLv1:武器を使用して対象の攻撃を受け流す防御スキル。

ショートステップLv3:瞬間的に移動力を強化する移動スキル。

ウインドバレットLv1:風属性の速射系攻撃魔法。

ライトヒールLv1:軽度の傷を治療する回復魔法。


筋力強化Lv3:身体能力を補う自己強化スキル。

気配遮断Lv1:隠蔽系自己補助スキル。

視力強化Lv1:視覚系自己強化スキル。

暗視Lv1:視覚系自己補助スキル。

スタミナ回復向上Lv2:体力系自己回復スキル。

魔力回復向上Lv1:魔力系自己回復スキル。


 脳裏に、現在覚えている技能スキルとその習熟度が羅列される。俺はこの能力を便宜上"スキルツリー"と呼んでいる。


 馬鹿にされるだろうから言わないが、このスキルツリーは見知ったスキルや習得済みスキルを一覧管理できる。本当にそれだけの能力で、なにか習得にボーナスが乗るなどの追加効果は無い。しかし、"男の子"としてはコレだけで充分。見ているだけでコンプリート欲が刺激されるし、修行の計画も立てやすくなる。


 因みに俺の適性職業"トリックスター"は、多彩な技能スキルの初期習得が早い人物にあらわれるらしい。悪く言えば器用貧乏だが…………それでも俺が、下層での修行を楽しくこなせているのはギフトも含めたコレラが強く影響している。もちろん、特別な"何か"を期待していなかったと言えば嘘になるが、ソロでマイペースに冒険できるこの能力も、これはこれで気に入っている自分がいる。



 そうこうしていると、緑の大蛇・グリーンスネークを見つけた。


「相変わらず、見た目は凄いよな」


 グリーンスネークは、地球基準だと恐ろしい部類の生物なのだろう。もちろん、巻きつかれたら危険なのは変わりないが、蛇系の魔物の中では"ザコ"の部類。毒を持っているわけでもないので、無防備な状態で巻きつかれないかぎりは倒しやすい相手だ。


「今日の俺はいつもよりテンションが高いんだ。悪いが、剣の錆になっ…………いや、錆は困る! 普通に狩られてくれ!!」


 俺の言葉を理解しているかは知らないが、緑蛇は躊躇なく俺に飛びかかってくる。


「やはり、知識は宝だな……」


 基本的に緑蛇は飛びつきからの噛みつき攻撃しかしてこない。つまり、その初動を覚えてしまえば、あとは軽く身を引くだけで回避できてしまう。


 続けて、目の前に運ばれてきた蛇の頭を、上段から一気に刺し貫く。頭はそれなりに固いので頭部は避け、首のあたりを狙う。単純に殺すだけなら、このまま頭を羽交い絞めにして首を裂いてしまうのが確実だ。しかし刃の通りが浅いと、巻きつかれてコチラも手痛い反撃を受けてしまう。


 ここは無理をせず、即座に離れて仕切りなおす。ここで致命傷を与えていれば緑蛇は逃げ出すので、あとは尻尾を掴んで腹を裂くなり、振り回して頭を岩に叩き付けるなりすれば簡単に倒せる。逃げないのなら最初からやり直しだが…………今回は逃げてくれたので、腹を裂いてトドメをさした。


「ダンジョンの恵に、感謝を」


 蛇の死体に向け、片手で合掌する。特に意味は無いが、余裕があるときは出来るだけやるようにしている。


 そうこうしていると、早くも緑蛇の体が朽ちかける。これは腐っているのでは無く、体から魔力が抜けて、その反動で体が脆くなったために起こる現象だ。魔物と動物の違いはココにあり、魔力依存度によっては殆ど死体が残らない魔物もいるそうだ。


「お、今日はツイているな」


 忍者刀についた血のりを拭い、納刀する。カチン! っと心地よい音が響き、オーダーメイド装備の完成度に感動と感謝をする。


 それはともかく、俺はナイフを取り出し、朽ちた死体から手早く"牙"と"魔石"を取り出す。魔物の体は驚くほど朽ちるのが早いのだが、幾つかの部位は魔力を宿したままの状態を維持してくれる。これが魔法素材や魔法燃料になるのだ。


「ん~、物欲は満たされる事無く、乾き飢える…………ってところか」


 忍者刀に不満は無いが、そのせいで逆に物欲が刺激されてしまった。とりあえず、固い魔物用に雑に使える武器と、解体用のナイフを新調したい。あと、魔法系の装備と…………防具も軽量のものでソコソコのモノを揃えたい。あとあと……。




 そんなこんなで俺は、冒険者としての生活を日々楽しんでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る