第16章 15 衝撃の知らせ

 自分のマンションに行くと、部屋に行く前に郵便受けを開けてみた。


「!」


すると中には白い封筒が入っていた。宛先は私の住所になっていて、差出人は名前だけが書かれていた。その名前を見て私は心臓が止まりそうになってしまった。


「川口直人」


う、嘘・・・!!


直人さんからの手紙だった。ショルダーバックに封筒を入れると急いで私は自分の部屋へ向かった―。




 鍵を開けて部屋に入るとすぐにエアコンを付け、上着を脱いでコートハンガーに掛けると着換えもそこそこにPCの電源を入れて、封筒を取り出した。ハサミで封筒の先端を切り取り、中身を取り出して、私は手を止めた。それは直人さんが予約してくれたディズニーリゾートのホテルのチケットだった。しかも2枚入っている。日付は勿論12月24日のクリスマスイブになっていた。何…これってどういう意味なの?すると中からハラリと小さなメモ紙が落ちてきた。チケットの間にはさまれていたようだった。そのメモにはたった一言だけ、書かれていた。


『ごめん』


と。


それを目にした途端、再び私の目に涙が滲んできた。何、これ?ごめんって何?たったこれだけしか書かれていないんじゃ意味が分からないよ。このチケットを2枚とも私の所に送ってき事、そしてたった一言『ごめん』の文字。それって、私とは24日に一緒にはいられなくなったって事?せっかくホテルを予約したんだから、誰か他の人を誘えって意味なの?


ポタリ


ガラステーブルの上に私の涙が再び落ちた。一度溢れ出てきた涙は止る事を知らない。


ポタリ

ポタリ


テーブルの上に私の流した涙の水たまりが出来ていく。酷い、こんなのってあんまりだよ。どうして2人で初めてのデートで泊まった思い出のホテルで別の誰かと泊まってと言わんばかりにチケットを送ってくるの?


「ッ・・・・!」


声にならない声で私は泣く。こんな一方的な別れ方をされて、24日に思い出が沢山詰まってるホテルに泊まれるほど、私は精神力が強くない。ううん、むしろこんな性格だったから…直人さんは私に嫌気がさして去って行ったの?

そして私はPCの電源を入れていたことを思い出した。そうだった、ホテルの宿泊券のチケットを目にしてしまったショックで思考が飛んでいた。私はPCを調べようとしていたんだ。直人さんからの多分最後のメッセージのパスワードがかかったHPのURL、そしてすみれさんに教えてもらった『川口家電』のHPを調べる為に…。


「…」


私は涙を拭うと、まず最初に『川口家電』のHPを見る事にした。何故、こちらを先に見ようと思ったのか…一番の理由は、怖かったからだ。直人さんから貰ったURL はきっと決定的な何かがあるはず。恐らく、それは私の僅かな希望すら全て打ち砕くかのような。だとしたら先にすみれさんが教えてくれた『川口家電』のHPを見たほうが…ずっとましにきまっている。


私は震える手でPCのキーボードで検索ワードの覧に『川口家電』の文字を入力し、Enterキーを押した。

するとTOP画面に表示されたのは『合併』の知らせのニュースだった。


「え…?合併…?」


記事の内容はこうだった。

長らく業界最大手の家電メーカーとして営業利益を上げてきた『川口家電』。しかし、最近陰りが見え始め、ずっと業績不振で低迷していた。しまいには多額の負債を抱えてしまい、『常盤商事』に買収される予定だったが吸収合併をする事になり、倒産の危機を免れた―と書かれていた。


「え…?一体どういう事なの…?」


そして次の記事を見て私は全身から血の気が引いた。


< スクープ!『川口家電』が倒産の危機を免れたのは若手御曹司と『常盤商事』の社長令嬢の婚約によるものか?! >


そしてそこには隠し撮りと見られる画像があった。映っていたのは勿論川口さんと…亮平が隠し撮りした女性の姿がニュース記事に貼り付けられていた―。


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