夢を見た

ピコン、とLINEが鳴った。


”おっはよー”

恒例の挨拶が一通り回っている合図だった。

俺も、適当に可愛らしいスタンプを押しておいた。


片瀬玲子から俺宛にメンションが入っていた。

「次回はそっちだよねー。楽しみにしてるー」

ああ、そういえばそうだった。


今、俺が住んでいるのは、それなりに都会だが、一方では観光地の顔を持つ。

高校がある地域は主にベッドタウンで、住むにはいいが、遊ぶ街とは言いにくい。

今でも地元にいるのが大半で、そいつらを誘ったんだった。

俺の街に、クラス会方々遠征しないか?たまには遠出して遊ぼうぜ、クラス会という名目があれば、家にも言い訳が立つだろ?


なんてことを言った気がする。

まあ、飲みの席の約束は、話半分だ。誰も本気にしちゃいないさ。


ところが、流れというのはあって、「次どうする、次どうする」と、話が盛り上がった。俺が立候補したという話は既成事実化されていた。


仕方ないので、実施希望日のアンケートを取った。

バラバラだった。

少しでも重複していれば、その日を中心に調整したのだが、見事にバラけた。

”困ったなあ、、、、”

決めかねたまま、数日経った。


アンケートの結果はみんなも知っているから、これでは調整は無理だということもわかっているだろうし、有耶無耶になっても苦情は出ないだろう。

仕切り直しをしよう、またの機会にな、と、書き込んで終わりにしようか、なんて思い始めた時、夢を見た。


学校だった。

俺は下駄箱の前にいた。学校の中から、生徒たちがワラワラと走り出してくる。

なんだなんだ、何事が起こった、と思っていると、

「こっちこっち!」

と呼ぶ声がする。

え?と思って、見ると高梨葵がいた。

「みんな待ってるよ!」

待ってるって何を?

高梨のところへ駆け寄ると、高梨は背中を見せて駆け出した。

周りには生徒たちが一緒に走っている。


一緒に走りながら、「あっち」なんだな、と思って、

目が覚めた。


「みんな待ってる」というセリフが妙にリアルで、クラス会を進めなきゃ、と思った。

でも、あっち?高梨が待ってる「あっち」って、死後の世界じゃん、行って良いのか?みたいな無粋なツッコミは、なしだ。


日程、地域、詳細な会場の希望、一つ一つ詰めて行った。

詳細な会場、店の選定でやはり詰まった。

通常の仕事もあり、一旦詰まると、2週間も間が空いてしまう。

そこからリブートさせるのも面倒くさいことだ。

フェードアウトさせちゃおうか、とまた思った。


そう思ったら、また高梨葵の夢を見た。

今度は一対一で話しているようだった。具体的な会話は忘れた。

夢の中で、「お前太ったな」と、言ったのだけを妙に覚えていた。


失礼極まりない。

と、自分を怒りながら目が覚めた。夢と現実の境目がこれだけ曖昧になった経験は初めてだった。


オカルト的なことは思わなかった。

何事もなかったところに夢を見て、それから亡くなったことを知ったなら、超常的なことを思いこそすれ、高梨葵のことをこれでもかと考え、考えた、その後のことだ。夢に見たって、それは当然の流れだ。

最初に高梨の夢を見たのが7/13、次に見たのが9/23なのも、こじつければ思わせぶりだが、ただの偶然だ。

7/13は新暦盆の迎え火の日だが、俺たちの地域は月遅れの8月がお盆だ。

9/23は秋の彼岸の中日だが、中日にいきなり登場するのも無粋な話だ。


関係ない。


俺たちは、そんな、彼岸と此岸を越えるような、強い絆を結んじゃいない。

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