第36話未確認生物の調査2


陽が傾き徐々に気温が下がってくる中、中継地点の村に着いた。成人男性の腰程の高さの石垣に囲まれ、石垣の周りには警備の者が巡回していた。村の割には警備が厳しい、その理由は物流の拠点でもあるからであろう、基本的には店などは無く唯一ある宿屋がずらっと並んでいる、ここの村は商人の買い付けそして物をストックする為の倉庫等の側面が強く基本的に一般の人間は宿屋にしか用が無い。


東西南北に入り口が設置され、そこで滞在目的と身分の確認が行われていた。全ての道が石畳に舗装されておりとても水捌けが良かった。村の外層に近い所に生活必需品を販売してる店が数件と宿屋が数件、宿屋とは少し離れた所に畜産用の牧場がある。そこを抜け中央に近づくにつれてより警備が厳しくなり、ある区画以降は関係者しか入れず石垣の壁も登る事が困難な程に高く、上部には返しが付いていた。


入り口の検査を終えると中に入る、人が閑散としている印象を受けた。商人の間で噂が噂を呼びミモザへ向かう人間が減っているとの事だ。一番安い宿屋の部屋を借り早目に就寝した。


翌朝陽が登り始めた頃行動を始める、ミモザとこの村の間をピストン輸送している乗合馬車に乗り込む、すれ違う馬車も人も昨日とは打って変わって少ない。


「ルシウスはどんな魔物だと思う?」


「雄叫びって事はウルフ系の群れとか?後は案外狼男とかかもな」


「狼男はないだろー俺をおちょくるんじゃねぇ!」


おちょくられたと感じたライズは少しヤキモキしていた。狼の獣人は普通に存在しているが狼男等聞いた事は無い本として存在しているのは、満月になると……と言った物で誰も信じておらず娯楽の一冊といった所だ。


「まぁ私達に依頼されたのは調査がメインだと思うから危なくなったら逃げましょう?特にライズ!あんたはほんっっっとうに余計な事はしないでよねっ!」


「あぁそうだなライズは特に気をつけて欲しいねホント」


「まぁまぁライズも落ち着いて下さいよ!怒ると身体に悪いですから」


「おいっ!テラ!俺が年寄りだとでも言いたいのか!冗談じゃねぇ、俺はこの間成人したばかりのピチピチだっていうのによ」


ライズのピチピチ発言に笑いすぎて腹痛を起こした三人を他所にミモザに到着間近だった。


「まぁ冗談はさておき今回は血潮の森での調査になるからルシウスも万全な体制を整えろよ?金はケチるな、金なんて生きてりゃどうにでもなるが、命はそうはいかねぇ!」


「ライズのクセにごもっともな事言うんだな」


「ルシウス気にしないで!コイツが言ってるのはお父さんの受け売りだから!ねぇ?ラ•イ•ズ?」


鼻高々に放った言葉をすぐ様セラはへし折った。言ってる事は間違ってないだろう?と言うライズにその点においては間違いないと各々考えた。ミモザに着き、まずは泊まる宿屋を探す昼頃という事もあって、人で賑わっていた。魔物の噂で人が減っている筈なのにこれだけの人間が居る事に驚いた。


通りでは店の従業員の呼び込みをしていた。声が活気を与えている要因の一つだろうが、何一つ変わりがないように見える、ここの住人は逞しい。


手頃な値段の宿屋に宿を取るとそこからは各々明日の準備の為買い出しに向かった。店の場所が分からないルシウスは宿屋の女将に場所を聞いて向かう。


女将に教えてもらった道を進むと武骨な店が顔を見せる、店の看板には剣と盾が交わるロゴが記載されておりドアには一見さんお断りの文言が書かれていた。

その文言に及び腰になりながらも店に入る、店に入るなり店主から大声で叫ばれた。


「ガキはお断りだっちゅうのぉーー!」


「あの……コノハさんの紹介でして……紹介状もここにあります!」


「コノハっちの紹介かぁ悪い悪い!俺っちはキース宜しくな少年!」


ぶっきらぼうな態度から一変、人の良い笑みを浮かべたドワーフはコノハの紹介との事で普通の対応をしてくれた。オウカの武器を購入したい旨を伝えるとオススメされたのはメリケンサックと大剣だった。


「ルシウスっちはトマホークが希望って事だが何故トマホークなんだ?まぁ俺っちに任せれば最強は無理だけど最高な状態には仕上げるけどよ!」


「オウカが斧を楽しそうに振っていたので斧が良いかなぁと思いました」


「じゃあそのオウカっつうやつ出してみな!」


キースの指示通りオウカを喚ぶと腕の長さ等を測り始める、ウンウンと独り言を発しながらも瞳の奥は職人の色を色濃く写していた。


「まぁ悪くねぇーよ?悪くはな!ただ腹周りが残念の一言に尽きるな、俺っちも人の事は言えねぇけどよぉ」


「ぶふぉ?ぶほぉ!」


俺の事言ってるの?と言った顔をしているオウカだったがその事を理解するとお前には言われたくないとお腹をさすりながら心外だなと抗議の声を上げるが苦笑いしているキースを見て暫く考えるとしょうがない事かと納得した。


「分かった!トマホークの件は考えるとして、俺はそいつに合った装備を使って貰いたい、だから何種類が用意するがいつ頃迄に入用なんだ?そんな早くだと準備出来るか分からないぜ?」


「とても言いにくいんですが、明日の朝迄になんとか……」


「おぉーこりゃたまげたな!明日の朝に作り終わる職人がどこに居んだ?そんな職人が居るなら二流ってもんだコノハっちの紹介じゃしゃーねぇ明日の朝にまた来い!なんとか揃えてみる」


「宜しくお願いします」


明日の約束を取り付け店を出た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る