第35話未確認生物の調査
ライズ達から話があった依頼は魔物の発見及び出来るようなら討伐というものだった。
依頼の内容はアルテランサ近郊にある街ミモザにて未確認の魔物らしき雄叫びが聞こえる為調査してほしいと依頼があった。家畜等の被害は無いが、今にも襲われるんじゃないかと毎日不安な夜を過ごしているらしい。そこで町長から依頼が出された。
ミモザへ向かう前にオウカの武器を購入したいのでライズ達と別れる、ミモザまでの移動手段は乗合馬車だ。馬車の時間になったら門の近くにある停留所で落ち合う事になった。
何処か良い店がないか相談にコノハの店へ向かった。
道中とても寒い、吐き出した息は眼前に白く飛散した。寒さが厳しくなるにつれて手袋の重要性を改めて感じた。店に着くと革手袋を仕舞い中へ入る、先程迄居た店内はさほど時間が経っていないのに何故か懐かしく感じた。入り口のベルが鳴ると奥からコノハとヒイラギが現れた。
「いらっしゃいませっ!ルシウスお兄ちゃんだぁ!こんな早くどうしたのー?」
「いやーオウカの武器を購入しようと考えてるんだけど良い店を知らなくてさ、だからコノハさんに相談しようと思って来たんだよ」
「オウカくんの武器はどんなものを考えてるのかな?
ルシウスが戻ってきた事に嬉しくなったヒイラギだったが仕事の話だった為部屋に戻っていく、特に案は持ち合わせてなかったが、斧では使い勝手が悪いからトマホークが良いんではないかとコノハから話があった。
お金の都合上量産品しか買えないが、コノハの話によると依頼との兼ね合いを考え、ミモザで購入した方が安いと言う話しだ。
「ちょっと待っててね紹介状をしたためるから」
その場で紹介状を作り上げるとルシウスに手渡す。
ミモザ迄の道程は、二日程掛かる。一日で中継地点の村に立ち寄り、二日目の昼には着く予定だ。
停留所に着くとライズ達を待った。その際出店で手軽に食べれる物を購入する、朝の時間帯だからか馬車も人も混雑していた。数分経つと人混みをかき分けてライズ達が現れた。
「待たせて悪いな!」
息切れをしているライズを見てそこまで急がなくても良かったのにと思ったが、その律儀な所に好感を持てた。順番待ちをしているとルシウス達の番になった。
アルテランサからミモザ迄の乗合馬車は比較的小型と馬車だった。その理由というのも現れる魔物の危険度の低さと移動するのに掛かる時間が短いと言う理由からだ。掛かる時間が短い理由の一つに魔物が馬車をひくというものがあるが、魔物がひかなくてもそこまで時間は掛からない。
五、六人乗れる程の広さの馬車に皆腰掛けると出発した。御者に確認してオウカ達を馬車内に出すと、のどかな旅が始まった。先日まで何度か足を運んだ森を横目に、踏みならされた道を進む。その際の話題と言えばオウカとクロについての話が大半だった。ママの話にもなったが、ライズの顔色が悪い事に苦笑いを浮かべるとその話をする事を控えた。
「そういえばクロちゃん達の武器とかはどうするの?話を聞くとトマホーク?って言うのかな?私見た事ないから分からないけどそんな珍しい物大丈夫なの?」
「ぶほっ!」
「まぁ本人もヤル気だし大丈夫じゃないか?どうせ量産品しか買えないから無理そうだったら違うのにすれば良いしさー!」
セラに心配されたオウカだったが大丈夫大丈夫と言わんばかりに肉体をアピールしていた。それを見て本人がやる気なんだしあんまり言っても失礼かと思ったセラはクロを膝に乗せて櫛でといてた。
「にゃあぁぁ」
「もう、ほんっとに可愛いんだから!うちの子にしちゃおうかしら!」
「いやー、それは困るよクロは家族だらね」
「冗談よ!冗談!だから戻ってきて?」
うちの子に発言に警戒したクロはそそくさとルシウスの膝で横になった。その行動に苦笑いしたルシウスだったが満更でもない。必死に説得したセラだったがその後戻って来なかったガクッと落ち込む仕草にテラがフォローに入るがセラの気持ちが上向く事は無かった。
「ねぇ!当て付けなの?嫌がらせなの?私を信用出来ないって言いたいノォォォ?」
大変そうなテラを見てクロはお前も大変だな?まぁ俺の毛並みに癒されろよとでも言うようにテラの膝上に横になると、にゃあにゃあ催促を始めた。
「分かった!僕がといてあげるねっ!」
先程までフォローしていたテラだったがそんな事お構いなくクロの毛並みに癒されていた。あんた薄情ねと言われる始末、だがそんな事も気にならない程の毛並みをクロは有していた。セラの恨めしそうな視線を他所にクロの毛並みを堪能してるだが、そんな視線を向けて居たのはセラだけではなかった。
「なぁクロー俺の所にも来てくれよー!その櫛俺があげたんだぞ?」
「シャァ!」
テラの近くに腰を下ろしたライズはなんとかクロの毛並みを堪能しようと、櫛の件を引き合いにだした。その事が余計に気に食わなかったのかいつもより激しく威嚇される、ホントお前空気読めないのなと言うように顔をフッンッと横に振り、オウカの所に移動した。
「ぶふお!ぶふお?」
オウカがここ気持ちいい?ここはどう?と至れり尽くせりの対応をしているとまた一人ガクッと落ち込んだ。
「俺があの時あんな事しなければ……」
「私があんな事言わなければ……」
心の声がだだ漏れな二人を他所にルシウスとテラは昼食を食べ始めた。ライズとセラにも声を掛けたが心此処にあらずといった状態で反応を示さない、その事が怖くなったルシウスだった。
「あの二人はいつもこんな感じなのか?」
「違いますよ!ライズは最初からですが、セラは何日もクロちゃんに会って無かったのでフラストレーションが溜まってたんだと思います」
「そうなのか、まぁしょうがないよなぁクロは可愛いからなー!」
「にゃあ!にゃあ!」
「そうですね!一度その毛並みを味わってしまうと虜になってしまうと言いますか、依存性がありますねだから二人の気持ちも分からなくないのですが……」
ルシウスの親馬鹿発言もあったが、テラはかねがね同意していた。
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