第31話依頼魔物の子守

協会に着き、いつもの男の所に行こうとしたが見当たらなかった。今日は休みなのかなぁと思いつつ空いている受付嬢の所にいった。


「こんにちは!あのー、ダンディな男の人は今日休みなんですか?」


気怠そうに机の上で頰杖していた女性は、ルシウスを見て久し振りの仕事に心を躍らせる


「あぁシルバーさんの事ね?隣町の牧場で珍しい魔物が生まれるらしくてそっちに行ったわぁ、あの人知識が凄い豊富だからたまに呼ばれるのよ。それで今日はどんな用ですか?」


申し訳程度に背筋を正した女性の胸元を見るとそこにはルルと名札に記されている。女性はルシウスの視線を感じて訝しい視線をかざした。


「僕には刺激が強いかもしれないけどあからさまな視線は失礼よ?ぷんぷん」


確かに世の男達はルルの立体的な胸元に視線を向けてしまうも知れないが断じて違った。


「あの、申し訳ないんですが名札を見ただけでルルさんの胸元見たわけでは……」


「あちゃーごめんあそばせー!おほほほほ」


危険な匂いを感じ、違う受付嬢の所に行こうとすると焦った雰囲気で引き止められた。


「ちょっとマッタァァァ!冗談だから!冗談だから!

私良い依頼オススメ出来る子だから!!」


「それなら良い依頼を紹介してくださーい!」


「ちょっと待っててねっ!」


ルルは手元にある依頼書を一つ一つ精査しだした。

ルシウスの腕輪を見てそんなにハードなやつは無理だろうと察して簡単なやつで、でも時間がかるが割の良い依頼を探すが中々出てこない。


「もう昼も過ぎてるし割が良いのは無いかも……テヘッ!」


「ルルさんに聞いた俺がバカでした!お疲れ様でした!」


呆れ果てて帰ろうとしたルシウスを引き留めあと十分

時間を下さいと言うので待った。その際希望金額や仕事内容などを伝え、暫く待つとやっとの事で依頼書が見つかったらいし。


「さっきは悪かったわよぉ!ちょっと暇すぎて、からかいすぎたわ。それで依頼の事なのだけれどやっぱり難易度が極端な物が多いわね、塩漬けされてる依頼も見たけどルシウスくんに紹介出来るのはこの一枚しかないわ」


ルルが持ってきた依頼はは商人からの依頼で魔物の子守だ。産まれたばかりの魔物が一人でご飯が食べられる様になるまでお世話すると言う物。


「それでお願いします!報酬はどれくらい貰えますか?」


「報酬は泊まり込みになるから食事と寝床も含まれるわ、でも良いわよ?一日銀貨一枚貰えるんだから!ただキツいけどねー、最初は十分おきとかにご飯あげなきゃならないしこの地図の目印にお店があるから行ってちょーだいっ!」


地図を受け取った後宿に事情を説明しに行った。

その際ヒイラギが寂しそうにしてたがクロを構うと寂しさは飛散した様だ。


先日ライズと材料を買いに行った通りに石材で作られた商店があった。入り口に看板をぶら下げ、その脇にはランタンがぶら下げられている。


夜になると灯が付いてとても風情を感じる事が出来るだろう看板には、ConoHa商店と書かれておりとてもお洒落な店構えだ。


入り口の扉を開けるとベルがチリンチリンと鳴りルシウスの来店を知らせる、陽が傾いてきたこの時間店の中は閑散としていた。外がは石材で出来ているものの

中は木材をふんだんに使い温かみを感じる造りになっていた。


カウンターの上に揺籠がありそれを揺らしている

温和な店主がそこにいた。茶色い髪を後ろに縛り

ひろょっとした男性が一人、ルシウスを見て笑みを浮かべる。


「いらっしゃいませ!ConoHa商店へようこそ!」


「イエローテイマーのルシウスです!協会から来ました!」


「おー!良く来てくれたね!私の名前はコノハ今日は店を閉めるから、そこでで待っていてくれるかい?」


テイマーがやっと来てくれたと喜び足早に店を閉めた。店の戸締りをした後揺籠片手に居間まで案内された。居間に着くと男は手早く紅茶を入れルシウスに差し出す。


「高級な物では無いけど良かったら飲んで!」


「はい!いただきます!」


(はぁ……落ち着く……」


「その顔を見ると口にあった様で良かった」


「美味しいです!とても落ち着きます」


「依頼なんだけど、シルバーキャットとウルフの赤ちゃんのお世話を頼みたいんだ」



コノハは揺籠をルシウスの前に差し出し布団を取ってみせる、そこには掌サイズの赤ちゃんが二匹いた。

まだ目は開いておらずスヤスヤと眠っている。



「可愛いだろう?ただまだ寒さにはそこまで強くないらしくてね魔物牧場の老夫婦には布団なんてかけなくても良いと言われているんだがどうしても過保護になってしまうんだ困ったよ」


「いやー分かりますよ!俺もそうなんですよね気づいたらやってしまうと言うか」


「ルシウスくんは何か魔物をテイムしてるのかな?良かったら見せてくれないかい?」


「分かりました!クロ!オウカ出ておいで!」


「にゃあぁぁ……」


「ぶほぉー?ぶふぉほぉー!!」


クロは出てきた瞬間に背伸びをし、オウカは赤ちゃん達を不思議なものを見る様に観察していた。


「黒猫がクロで、こっちの赤いオーガがオウカって言います」


「クロにオウカだね?分かった二匹とも仲良くしてやってねルシウスくんに使ってもらう部屋はこの上の端っこにあるんだついて来て」


二階の一番奥の部屋に入るとベッドが一つに小さい暖炉が一つ後は家具などの生活必需品は一通り揃えられていた。流石商店をやっているだけある。


「ここにあるのは好きに使って良いよ、足りない物があったらその都度教えて欲しい私が揃えるから」


「ありがとうございます!今日から宜しくお願いします」


「礼儀正しい子は好きだよじゃあこの子達を頼むね!私は下で事務処理をしないといけないから任せる」


ルシウスに赤ちゃん達を預けるとコノハは下へと降りて行き事務処理を始めた。


「取り敢えず赤ちゃん達が起きるまで待機だなぁクロもオウカも協力頼んだぞ?」


「にゃっ!


「ぶふぉ!」


頼もしい二匹を見ながら赤ちゃん達が起きるまで待っていた。

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