第30話魔物の子供2

クロ達が居る所迄戻ると、クロが出口で待ち伏せしていた。セラとテラも、ルシウスの足にくっついているオーガの子供に興味津々と言った所だ。クロはルシウスの足に抱きついているオーガの子供が許せないらしく、駆け寄り、猫パンチを繰り出した。


「にゃー!」


「ぶふぉ?ぶふぉっ!」


 猫パンチをされて、クロの存在に気づいたオーガの子供はルシウスから離れ、クロを抱き寄せた。嫌がる素振りをするクロを、オーガの子供はそんな事は気にしないと言った様に頬を寄せスリスリする。


それを見て、仲良く出来そうだと思ったルシウスはこの魔物をテイムする事にした。一連の流れを見て、セラとテラは困惑していた。


「あの……果物を取りに行ってたんですよね? 何故こんな事に?」


「そうよ! なんでこんなに可愛い子が増えてるの? ルシウス君ってそういう属性なの?」


「いやぁー……これには事情があってさ……」


 一連の騒動をセラとテラに説明すると、セラは特に言いたい事も無いようでオーガの子供にハムサンドを半分あげて餌付けしていた。


テラはと言うと、溜め息をついた後、ルシウス達の為に取っておいたハムサンドを半分オーガの子供に分け与えた。


「私達もまだご飯食べて無いのよ! 皆で食べましょう?」


「そうですね、僕達はルシウスさん達が何も採れなかった場合の事を考えて食べずに待ってたんです」


  「あぁ、悪いな。じゃあ食べるとするか!」


 セラとテラはハムサンドを、残りの者は採ってきた果物や木の実を食べ始めた。クロはあの酸っぱい果物を敬遠して、胡桃に似た木の実を食べたそうにしていた。


それを見たルシウスは、その辺に落ちている大きめの石を取り殻を割る綺麗に割れると、待ってましたと言わんばかりにクロが実を食べ始めた。


 オーガの子供は枝豆の様な果物が好きらしく自分で取り出して食べ始めた。


「どんな名前が良いかなぁ……オーガねぇ……オウカでどうだ? まずいか?」


「ぶふぉ! ぶふぉ!」


 ヘンテコな名前でダメかと思ったルシウスだったが、オーガの子供は嬉しそうにしながら実を取り出してルシウスの口に運んだ。


「おっ、ありがとな! ……ぷはぁ、やっぱり酸っぱいなコレは、じゃあ、お前の名前はオウカだ! 宜しくなオウカ」


「ぶふぉ!」


 オウカは自分の胸を力強く叩くと任せろと言っている様だった。


「頼もしいなぁ」


 そんなこんなで昼食を食べ終えた。そこで一つ問題が発生した。オウカ用の魔玉が無いのだ。どうしたもんかなぁと、頭を悩ませていると、テラが助け船を出してくれた。


「それなら大丈夫だと思いますよ? そいう時の為に魔物牧場の後ろに小さい門が設置されてます! そこからなら入れますよ」


「そうか! それなら大丈夫そうだな。俺は街に戻るけどライズ達はどうする?」


「俺達はもう少しここで金を稼ぐぜ!」


 ここに残るライズ達とは別れて門に向かった。

 そこは表にある門よりも小さく、裏にあるからと言って汚くはなかった。こじんまりしており、小綺麗に管理されていた。


門の所に居る門番に挨拶をし、腕輪をかざして中に入る、中に入ると直ぐに魔物牧場の敷地内で、ウルフ達が近くでルシウスの様子を窺っていた。


「ウゥワン!」


 ウルフは暫くルシウスを見詰めると、なんだお前か、さっさと行けよと言った様に素っ気なく対応した。

 ルシウスは知らなかったが、魔物牧場の敷地には警備の為の魔物が放たれている。それを横目に魔物牧場迄直行した。今度からはここの門を使う事を心に決め、魔物牧場に入った。昼休憩を終えた爺さんが、馬房内にご飯を準備している所だった。


「あの、魔玉売ってもらえませんか?」


 ルシウスの存在に気づいた爺さんは、カウンターに行って、魔玉を取り出した。


「銀貨三枚だけど大丈夫かい?」


「お願いします!」


 オウカを見て笑みを浮かべた爺さんは、好きな模様を聞いて登録をしてくれた。真っ赤に染まった魔玉は、肌の色が赤いオウカを示し、玉の中央に鋭い角が一つ、これは申し訳程度にちょこんとある角が、立派に成長する様にと気持ちを込めた。


「おまたせ!」


 爺さんから貰った魔玉を腕輪に装着した。


「オウカ俺と一緒に来てくれ!」


「ぶふぉ!」


 ルシウスの言葉に応えると、魔玉に入って行った。


(金欠だ! どうしよう……)


 爺さんに御礼を言うと、良い依頼が無いか、協会に向かった。

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