第29話魔物の子供
セラ達が生命草の採取をしている所は何時も採取している森なのだが、何時も採取している所よりも結構離れた人が少ない所で採取をしていた。ルシウス達を見つけるとセラ達はルシウス達に手を振る、ルシウス達もセラを見つけると足早に向かった。
「今日は何時もと違う所なんだな? 人の姿が見えないけど大丈夫なのか?」
ルシウスの問にセラは手を休める事無く答えた。
「この辺はあまり人が居ないから生命草が多いのよ、たまに魔物が森から出てくるから注意が必要だけどね」
セラの言葉に少し不安になったが、たまになら大丈夫かと思い生命草の採取を始めた。セラ達はある程度集め終わったらしく休憩をし、ルシウス達が採取している間クロと戯れていた。
「こんなに元気になるなんて思わなかったけど、本当に良かった」
「そうですね、僕も此処まで短期間に元気になるなんて思わなかったなぁ……この愛くるしい感じたまりませんよね!」
三十分程採取を終えるとお腹が減ったので昼食を食べる事になった。セラとテラが食事の準備を始めるとルシウスとライズは立ち尽くしていた。
「飯買うの忘れたぞ! ルシウスは用意したのか?」
「いや……忘れた。水筒で頭が一杯だったから」
二人してやらかしたと苦笑いしているとライズが提案する。
「自生している木の実とか果物を探しに行かないか?」
「そうだな……森なら何処でも多少はあるだろうしな!」
二人共田舎に住んでいた為とても逞しい、クロをセラ達に預けると森に入った。昆虫の鳴き声を頼りに集まっている所を重点的に探す、昆虫が集まっている所は蜜や果物があるのが通例だ。
ある程度歩くと草が密集している所があった。その草を掻き分けて地面を見ると案の定果物がある、それは先日食べた枝豆の様な形の果物、膝辺り迄伸びた草に実っている。一つ一つ丁寧に取り、ルシウスのポーチに収納した。十分程取り続けると結構な量を確保する事が出来た。
「俺はこの実が苦手なんだよなぁ……クロはどうだ?」
「微妙なリアクションだったな」
クロが跳び跳ねていたあの場面を想像すると自然と笑ってしまった。ライズはこの実だけだと不満らしく木の実を探す。二、三分歩くととても大きい大木が現れた。枝の先端には胡桃の様な実が実っている。
(人があまり入らない所は食料の宝庫だな)
「ルシウスはここで木の実を受け取ってくれ」
一言告げるとライズは大木を登り始めた。見た目に反して軽やかに一定のリズムでスルスル登るライズを見て、ルシウスも木登りをしたくなったのだがぐっと我慢した。
「いくぞ!」
ライズは一つ一つルシウスの動きを見て実を落とす、それをルシウスは落とす事無くポーチに収納した。
二十個程ポーチにしまうと草がすれる音がしたので後ろを振り向くとオーガが一体こちらを見つめていた。
(えっ……なんか小さいな……)
ルシウスのお腹辺り迄しか身長が無く、弱々しく果物を見詰めるオーガ、そのオーガはツノが片方ポッキリと折れており痛々しい。だが、油断は出来ない。父親が言っていた事を思い出した。
゛魔物の子供が居たら注意しろ、近くに親が見張っている″という事を思い出し小さい声でライズを呼んだ。
これは親と子供を刺激しないようにする為だ。ライズも木を降りてオーガを確認する。
「取り敢えず戻るか? 親が居たら大変だ」
「それが良いな」
ルシウスの言うことを了承すると、ゆっくりとした足取りでセラ達の元へ戻る。たまに後ろを振り向くと子供だけが一定の距離をあけて着いて来ていた。
(どうしたもんかな……お腹減ってるのかな)
ルシウスは立ち止まり枝豆の様な実を一口食べた。するとオーガの子供は涎を垂らして我慢できなさそうに地団駄を踏む、それを見て何故か可愛いなと思ったルシウスはオーガの子供に実を投げた。
オーガの子供はルシウスを見詰め、首を傾けるとルシウスはまた実を食べて食べるように促す。その間ライズは周りを警戒して何時でも戦える様に構えていた。
オーガの子供は恐る恐る実を取り口に運ぶと、美味しかったのか止まらなくなりルシウスにおかわりを要求した。
「ぶふぉ! ぶふぉ!」
手を叩きもっと頂戴とジェスチャーするオーガの子供はとても可愛かった。ルシウスがポーチから実を取り出してオーガの子供に投げると、オーガの子供は受け取って、食べながらルシウスに近づいた。
実を食べながらルシウスの足に抱きつく、ある程度警戒していたライズは警戒を解いてルシウスに近づいた。
「そいつどうするんだ? はぐれたか親が死んだ可能性もある、あまり食べさせると野生に戻せないぞ?」
「取り敢えずクロの所に行ってから考えるよ! このまま置いて行ったら死んじゃうし」
「ルシウスが良いなら俺は文句無いけどな」
オーガの子供を抱えながらクロの所に向かった。
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