第26話討伐依頼4

 街迄戻りギルドにて買い取りをしてもらった。

まだ明るいので狩りを開始する、買い取り額はゴブリン四体で銀貨一枚と銅貨二十枚、ジャンピングラビットは肉そのものの買い取りで一体銅貨十枚×三体だ。


一日の終わりにこれから稼ぐ分を分配して夜ご飯を一緒に食べる約束をして今は森の中を進んでいる、先程ゴブリン達を討伐した所から更に三十分程進む、岩が転がり歩きにくい中先頭を歩くライズが皆に合図を送った。どうやら魔物が居た様だ。



音を立てずに一同ゆっくりと進む、ライズが居る所迄着くと木々の間を注意深く覗いた。すると開けた場所があり木の実が実っている所にコボルトが五体木の実を取ろうと奮闘していた。


「コボルトが五体か……大丈夫なのか?」


 ルシウスが小声でライズに聞くがライズが顔を縦に振るとテラが小声で詠唱する。


「森に佇む風達よ、我の命を受け彼の者に風の恩恵を与えよ【ウインドダンス】」


 テラが魔法を唱えるとルシウスとライズの足元に風が集まった。これはルシウスとライズの素早さを上げる補助魔法だ。魔法が効いている内に戦いを始める、ルシウスとライズはアイコンタクトをした後コボルトに向かって走り出した。


(早い、軽い、風のようだ……)


 何時もの倍近くのスピードにビックリしながらも制御しながらコボルトとの間合いを詰めるた。


初撃で一体ずつ討伐すると残りの三体が異変に気付き果物を諦め新鮮な獲物に狙いを定めた。短剣を振るうコボルトの動きが遅く感じる、何時もよりも体が軽く躱すのも容易い、短剣を躱すとカウンターぎみに上から下に斜めから斬りつけた。


その間も、もう一体のコボルトがルシウス目掛けて短剣を突き出すがそれを自前の剣で往なし、お返しとばかりに斬り上げた。ライズの方を見ると既に戦闘は終わっており討伐証明の歯を切り取っている、念のため剣で突き刺し絶命したのを確認すると歯を二本切り取った。毛皮の剥ぎ取りはテラが得意らしいのでテラに任せる。


「しかし魔法って便利なんだなぁ? ビックリしたよ」


「ルシウスは補助魔法初めてか?」


「あぁ、魔法自体あんまり見た事無いな」


 ルシウスとライズが魔法の話をしている間セラはテラを手伝っていた。


「セラはここと……ここお願い出来る? 僕は頭と耳の方やるからさ」


「分かった! 任せてちょうだい」


 三十分程かけて剥ぎ取りを終えるとルシウスのポーチに収納して昼食の為場所を移動する事になった。

 十五分程歩くと切り株があり、そこに座って昼食を摂る、クロを魔玉から出すと出すの遅くね? と言った様な態度をルシウスに向けた。想定内なのでサンドイッチを取り出し、クロを手招きするとルシウスの膝の上で食べ始めた。


「にゃ! にゃっっ!」


 旨いぞ! 旨いぞ! とモリモリサンドイッチを食べるクロ、それを見て笑みを浮かべるとルシウスも食べ始めた。


「安定して旨いなこれは」


「だな! 毎日食べても飽きないもんな」


 ルシウスの独り言にライズが応える誰よりも早く食べ終わったクロは首を傾け、可愛いポーズでサンドイッチをおねだりしていた。


(小悪魔だな……)


 ルシウスはお腹が減っていた為その視線をスルーしたのだが、セラとテラは我慢出来ずにちぎってクロに与えていた。


「セラもテラも悪いな……こいつ凄い食べるんだよね……」


「いや良いの、私は今日動いて無いし見てるだけで満たされるから」


「可愛いのでつい……僕も魔法を使っただけなので大丈夫ですよっ!」


 セラとテラにお礼を言うとライズが皮袋から何かを取り出して飲んでいた。


「それなに? 水筒?」


「まぁそんな所だ。俺が作ったんだがな」


 ライズが取り出したのは竹で出来た筒状の物で先端に小さい穴が空いておりそこに木で作った釘の様な物で蓋をしている水筒だ。


「へぇライズって意外に器用なんだな」


「そうだろ! そうだろ! 意外だろだが意外に器用なのは事実だ」


 ライズは大きな声をあげながら楽しそうに笑っていた。


「それっていくら位掛かる? 俺水筒無いから買おうかと思ってるんだよね」


 ルシウスは此処で安くすませられれば助かるなと思いライズに尋ねた。


「これか? そこら辺に竹があればタダだなでもここらへんには竹が無いからなぁ……材料費出して貰えるなら作ってやるぞ?」


「本当か? 材料っていくらだ?」


「街に竹があるか分からないが俺と同じ位の大きさなら銅貨三十枚位で作れると思うぞ?」


(これなら安くすませられるな……)


「じゃあ街に戻ったら頼むわ!」


 意外な所から安く水筒を得る事が出来る様になりルシウスは午後の討伐に向けてヤル気が爆発していた。

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