第27話打ち上げ


 午後の討伐を終え街迄戻ってきた。纏めてギルドにて買い取りをして貰うと、一人頭銀貨一枚と銅貨二十枚になるのだがライズはルシウスに少し多目に渡した。ルシウスは個人でライズは幼馴染み達とパーティを組んでいるので多目に渡してくれた様だ。それに対して誰も何も言わないので遠慮しながらもルシウスは受け取った。


「本当に助かるよ!」


「こん位気にすんなよ、ギルドに木材屋の場所を聞いたら街の外れにあるらしい、今日は夜飯皆で食って水筒は明日にするか?」


「そうだなそれで何処に行くんだ?」


「安い早いボチボチ旨い店があるんだ。魔物も大きくなければ利用できるし、テイマーもたまに居る店なんだがそこでどうだ?」


 クロとあまり仲良く無いライズだがクロの事迄ちゃんと考えてくれている事に嬉しくなったルシウスは直ぐ様了承し、オススメの店に向かった。


その店はギルドの裏手を少し行った所にある少し大きい店だ。ライズの話ではギルドの酒場は新人には居心地が悪いらしくある程度迄皆此処でご飯を頂くと言う話だ。


値段も安く量も多いので稼ぎの少ない新人の味方と言った所だろう。扉を開けるとその店は活気に溢れていた。頭に耳が付いている女や、角が生えている男が客の注文を取り厨房の料理人に伝えていた。ルシウス達が店に入ると角が生えた厳つい男が側まで来た。


「いらっしゃいませ! 魔物を連れている方は居ますか?」


 見た目に似つかわしくない程丁寧な対応に拍子抜けしてしまったがシャドーキャットの子供が一匹と伝えるとその場に出して欲しいと言われた。


「にゃ?」


「この大きさなら問題無いですねそれではお席にご案内致しますのでついてきてください」


 男の後ろを一向はついて行くが時折料理を運んでいる人とすれ違い、料理の匂いに食欲が掻き立てられるそれはクロも同じで男の後ろにピタッとくっついていた。


クロはこの男が料理をくれるのだと本能が言っていたのだろう、店の一番奥にある角の机に一向は腰を下ろした。クロはルシウスの膝の上だ。


「ご注文が決まりましたらお呼び下さい」


 男は一礼すると他の客の所へ走っていった。クロは色々な美味しい匂いに落ち着かない様子で、それを見てセラもルシウスも可笑しくなり笑ってしまった。何時もなら機嫌の悪くなるクロも刺激が強すぎるのか何処吹く風だ。


「ここのオススメは料理長の日替わりディナーだなこの日替わりディナーはナント銅貨三十枚でパンとエールそれにメインでその日取れた獲物が出てくる!とってもお得だ!」


 ライズは少し興奮ぎみにこの店の説明をしていた。

 初めてくる店なのでここは素直にライズに従う事にした様だ。


「じゃあ俺はそれで良いや! クロには何が良いんだろうか?」


「それも問題ない、魔物用の料理がある一律銅貨十枚だ好き嫌いや食べれない物を伝えれば料理長が勝手に作ってくれるぞ」


「それは頼もしいな、じゃあそれで」


 セラとテラは既に決まっていた様で、クロの反応を見て楽しんでいた。ライズが店員を呼び注文をする、十分程で全部の料理が揃った。とても早い。

 この日のメインはサイクロプスで作られたシチューだ。テーブルに料理が並ぶとエールを手に取り乾杯をする。


「「「「カンパーイ」」」」 「にゃ?!」


 一同グビグビとエールを飲み干し息を吐く。


「プハァー生き返るぜ!」


 床で食べさせるのも嫌だなと思っているとクロ用に小さいテーブルを出してくれた。その上にクロ用の料理を置くと無我夢中で食べる、店員に何が使われているのか聞くと川魚を茹でて薬草とトマトの様な果物を入れた体に良い食べ物らしいこの果物は角張った形をしており、色は赤く甘酸っぱいながらも後味がピリッとしている。クロの食べっぷりを見て腹が鳴ったルシウスは、シチューを一口。


「う、旨いぞ……なんだコレっ!」


 サイクロプスの肉は筋肉質で固いのだが、筋を取り薬草で柔らかくした肉は、口の中でホロホロとほぐれながらも肉汁がこれでもかと主張してくる。流石プロの仕事だ。


「だろ? 安いし旨いし……だからこのザックリンダさんの店は繁盛してるんだぜ?」


 ザックリンダは引退した冒険者である、冒険者時代大して強く無かった彼は仲間内に出す料理を褒められそれが嬉しくて料理の道を志した。引退すると現役時代のコネ等を使い未だに安くで料理を提供している。


「確かにな……コレなら繁盛する訳だ」


 十分程で平らげるとセラが食べ終わる迄待った。

 待っている間クロもおかわりを要求してきたので同じものを頼む。


「待たせちゃったね、ごめんね!」


「いや気にする事ないよ、ゆっくり食べたくなる様な美味しさだったもんね」


「今日はルシウスさんが居たから何時もより美味しく感じたなぁ」


 テラのルシウスが居たからと言う言葉を聞いて、クロがひょこっと顔を出すと、俺も居るぞ! と言っている様だった。


そこでごめんなさいと言うテラを見て

 しょうがないなぁと言う様に料理の余韻を楽しんでまったりしている、ある程度休むと今日はお開きになった。


 明日の朝ルシウスの所に行くと言う話で店の前で分かれた。帰り道今日一日を振り返ったルシウスは自然と笑みを浮かべていた。ここ最近の充実感といい、ライズ達と仲良く出来ており一緒に居る時間が楽しいのだ。あっと言う間に宿に着くと爺さんに食事を断り部屋に入った。


何時もの様にクロを櫛でといてやると、前よりも少し大きくなった様な気がした。


「あれ……お前大きくなってないか?」


「にゃ!」


 そうだろ? 俺も成長してるんだぜと言ったような顔をした後欠伸をしながら寛いでいた。


「そうかぁ、あんだけ食べれば大きくなるよなぁ一杯食べて大きくなれよ? 俺も頑張るからさ」


 ルシウスの話も半分と言った所でクロは安心して眠りについた。

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