第5話試験2
村に帰るとそのままドレイク宅に報告の為お邪魔する。
「討伐証明の耳を出してくれ」
「分かりました」
ポーチから耳を出してテーブルに並べビックボアの頭を床に置いた。胴体は家の前に置いてある。
「合格だな、戦闘は楽だったと思うが持ち帰るのは大変だっただろ?」
「そうですねまさかここまでとは思いませんでした……」
ビックボアを引き摺る事に苦労したルシウスは苦笑いと共にドレイクの話を肯定する。 ドレイクはルシウスの話を聞き終えると、引き出しから革袋を取り出しテーブルに置いた。
「これは村の皆がお前の為に少しづつだがくれた金だ。これから大変だと思うが精進するように!」
「有り難く頂きます」
人の前でお金を数えるのは失礼だと思い、感謝の言葉と共にポーチに収納した。試験も合格したのでビックボアを引き摺りながら自宅に戻ると心配していたのかメアリーとカイルが自宅前でルシウスの帰りを待っていた。メルザはと言うと心配しては居たが無事に帰って来ることを信じ、お腹を空かせて帰って来るであろう息子の為に家の裏手にでバーベキューの準備をしていた。
「おぉ、ルシウス大丈夫だったか?」
カイルの心配していたであろう言葉を聞いて苦笑いをしたのと同時にあれだけ練習していたのだから大袈裟だとも思った。
「合格したよっ!」
得意気の顔をしているルシウスの頭をカイルはグシャグシャと撫で回した。
「流石俺の息子だっ!アッハハハハ」
「メアリーが見てるだろー父さん辞めてくれよ……もう大人なんだからさ!」
反抗期かとも思ったが寂しそうな顔をして辞めるカイルその顔を見て少し言い過ぎたかと思ったがその手には乗らないぞとメアリーと向き合う。
「お父さんにそんな言い方しなくても良いと思うけどなぁ……お父さん可哀想だよ!」
「そうだそうだ!父さん可哀想だよ。!良く言ってくれた、メアリーちゃんが早く嫁に来て欲しいわぁこの馬鹿の事宜しくな」
カイルは言うだけ言ってメルザの手伝いをする為に裏手に向かった。
爆弾を投下したカイルは居なくなったがその爆弾のせいでどう接すれば良いのか困惑し二人とも黙りしてしまっている、メアリーが先日と違いクッキーを袋に入れてリボンで留め可愛くした物をルシウスの前に差し出した。
「これ……美味しいって言ってくれたから作ったの……もう少しで旅に出るんだよね?」
寂しそうにそして悲しそうに旅と言う言葉を絞り出すメアリーそんな幼馴染みの顔を見ていたたまれなくなっていた。
「うん、後三日で旅に出るよ」
言葉少くなに告げるルシウスもどういう言葉を言えばメアリーが落ち着くのか分からない。
「そうよね……分かった。帰るね……」
旅立つ時にこんな事になるなんて思わなかったルシウス引き留めなければいけないと思いながらも言葉が出ない。緊張で喉が渇いていた。
(好きだ。好きだ。好きだ。俺はメアリーが好きだ。でも今は言えないまだ今は……)
そんな時にメルザに呼ばれるメアリーとルシウス
「メアリーちゃんもビックボア食べて帰りなね? こんなに沢山うちらだけじゃ食べられないからルシウスは父さんの所に行ってビックボアを解体してちょうだい」
逃げるようで嫌だったがここはメルザに任せた方が良いと思い ビックボアを引き摺りながら裏手に向かった。
「メアリーちゃんごめんねぇあの子恋愛とかはメッキリでさ、それにメアリーちゃんが可愛いから余計に緊張してるんだと私は思うなぁ」
メルザに可愛いと言われ赤面しているメアリーだがメルザに腕を引っ張られながら裏手に向かった。
「遅かったなうちの息子が馬鹿ですまないメアリーちゃんも沢山食べて帰りな」
「分かりました。遠慮なく頂きます」
ルシウスはカイルに馬鹿と言われて噛み付きたくなったが今日ばかりは確かに馬鹿だったなと思った。
触れられたくない思いを隠す様に網の上に肉を置いていく元冒険者のカイルの手にかかればビックボア等ものの数分で解体出来るのだ。
肉を乗せた後空いている所に村で取れた野菜を並べる、焼ける迄の間ルシウスとメアリーは少し気まずそうにしていたが、カイルが今日森で何があったか聞いてきたので気まずさが薄れていった。母もメアリーと談笑しながら夜が更けていく
「ちゃんとメアリーちゃんを送るんだぞ」
食事を終え酔っぱらったカイルに言われルシウスはメアリーを自宅迄送った。村の中で危ない事等無いに等しいのだが酔っぱらったカイルはまぁ面倒臭いので従い、家迄送ると直ぐ様帰ろうとしていた。
「あの……ちょっと待って」
帰ろうと鍔を返すルシウスの腕を引っ張るメアリー振り返り様にルシウスの唇に自分の唇を重ねた。
(えっ……)
初めての事に体が硬直するルシウスを置いてメアリーは唇を離すと話始めた。
「旅に出たら色々な女の子と出逢うと思うの……だから……初めては私が貰った……」
「いやっ!そんな事……」
言いたい事だけ言うとルシウスの話も聞かずにメアリーは駆け足で家に入っていった。
ルシウスは暫茫然自失になり立ち尽くして居たが数分後には家に帰る為歩き出す。
家に着くとカイルとメルザの顔を見るのが恥ずかしいと思いそのまま自分の部屋に入ると父と母は何があったのかなんとなく察し、ルシウスに何も言わずそっとしておくとルシウスは外が明るくなるまで寝れずに頭の中がメアリーで一杯になっていた。
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