第6話旅立ち

あれから三日が経った。三日間の間メアリーの事が頭から離れず練習も身にはいらない事でカイルからお叱りを受けるがどうにもならないのも事実。


あれからメアリーとは一度も会う事もなく日々練習を繰り返していた。今日はドラゴンフルーツを買い付けに来る商人ベラルテの馬車に乗せてもらいアルス王国第三の街アルテランサへ向かうそこでテイマー協会にてテイマー登録をする予定だ。


 登録するとテイマーに必要な通称魔玉を安くで買う事ができ専用の依頼を受ける事が出来るのでテイマーにとって必須の組合だろう、入る事に得があっても損の無い所である。


魔玉とは魔石結晶(魔石)と呼ばれる水晶の様な結晶を用途によって様々な形に加工し魔力を溜める事の出来る鉱石にしたものだ。


 大きい街や国ではこの魔石を使い様々なマジックアイテムを使って田舎よりも利便性にとんだ生活をしている、魔石を使って初めて機能するアイテムをマジックアイテムと言い灯りや水等マジックアイテムは多様性があり重宝されており生活の中で無くては困る物の代表的な物と言えるだろう市民の中には魔力量が少ない者も居る、その為魔石から無くなってしまった魔力を補充する為に魔力屋と呼ばれる商いがあり市民でも使える様になっているのだ。


 その魔石を時空間魔法で加工して魔物を収納し持ち歩く事が出来る様にしたのが魔玉だ。街の中ではテイムした魔物は魔玉に収納するのが基本的なルールで収納していないと入る事が出来ない事が多々ある。


 魔玉は魔物一体につき一つとなっており、魔物の魔力波(人間で言うとDNAなど)を登録すると他の魔玉には収納出来ないようになっていて主人の魔力波も一緒に登録されるので盗難対策はバッチリだ。


ただ無くしてしまうと大変な事に変わりはないので用心しなければならない事に変わりはないテイマーの生命線だ。


 ルシウスは村の入り口にてベラルテの買い付けが終わる迄待っていた。その際そわそわしながらメアリーを探すが来ていない様だった。


(今日は来てないのか……)


 メアリーが居ない事に少し気落ちしたが、しょうがないと割り切り

 ベラルテを見ると丁度買い付けが終わった様だ。


「君がルシウス君だね?」


 すらっとした体格のベラルテが温和そうな顔をしてルシウスを見つめていた。


「はいベラルテさん今日からアルテランサ迄宜しくお願いします」


 ベラルテにはルシウスのカイルがお金を支払っているので何も問題は無い、村を出る時はその者の親がベラルテに料金を払ってアルテランサ迄乗せてもらうのが通例だ。


「まぁそう畏まらなくても大丈夫だよ、今日からアルテランサ迄大体早くて十日、遅くて半月は掛かるからねぇそのままだと疲れてしまうよ」


 ベラルテは自分の息子程の歳の子が気を使って居るのを見て少し気掛かりだった。移動の際は色々な事が起こるのでずっと気を張っていると何かあった時が大変だからである。


 ベラルテは護衛の冒険者五人に対して馬車に荷物を積む様に言い付けると村人達と談笑をしていた。

 買い付けたのはドラゴンフルーツと野菜等どれもこの村の名産品だ。


ドラゴンの魔力で早くに成長し味も良く、ここの特産物は他の村や街そして国等で高値で売れるのだ。数自体は少ないので数分程で馬車に積み終える、その間もルシウスはメアリーを探すが見つける事が出来なかった。


「ルシウス君行こうか馬車の中で座ると良いよ」


 ベラルテの所有している馬車は四頭だての大きな物で商品を積んでもまだ数人寝る事の出来る広さがある。今はこの村で買い付けた商品と村人達に売る商品だけなのでまだ乗れるがアルテランサに着く頃にはルシウスも歩かなければいけないだろう、ベラルテはそこそこ大きい商会に所属している中堅商人なのだから。


 ルシウスの村で売るつもりだった商品を売り村人達は次に来るときに持ってきてもらうものを頼んでいた。


「ルシウス頑張って来いよ!父さんも母さんも何時でも待ってるからな」


「ルシウスちゃんとご飯を食べるのよ? あまり無茶をしてはダメだからね」


 父と母から村での最後の言葉を聞き終えると、ルシウスは馬車に乗り村人達を見ていた。村人達はルシウスに一言二言言葉を掛けると戻っていく二十分程経つと父と母だけになった。


「じゃあ行きますか、テリトさんアスマさんお願いしますね」


 ベラルテは護衛の冒険者に声を掛けると馬に軽く鞭を入れるすると馬が素直に歩き出した。


 その直後村の方から走ってくる人影が見えた。


(あれはメアリーじゃないか)


 実際はメアリーかどうかは分からないのだがメアリーであって欲しいと願いベラルテに停まってもらうように頼む、すると数十秒後にはメアリーが現れた。


「メアリーっっっ!」


「はぁ、はぁ、はぁ……間に合った……」


 息を切らして馬車の後ろで膝に手を置きながら息を整えるメアリーをルシウスは抱き締めていた。メアリーの呼吸が落ち着きそれを見てルシウスも落ち着くが落ち着いた二人は今の現状に赤面し咄嗟に離れる、メアリーは俯きながら七色のアクセサリーをルシウスに差し出す。


「これを俺に?」


「うん……三ヶ月前にベラルテさんにね、これを作る為に革を注文して先月買ったの……それで作ったんだぁ……御守りにならないかなぁって」


 メアリーがプレゼントしたのは手首に付けるアクセサリーでミサンガの様な物だ。ドラゴンフルーツの皮で着色した綺羅びやかな皮を編み込み、輝いている筈が無いのにナルカは光輝いているような錯覚に陥った。


 そのアクセサリーはこの村で昔から語り継がれた物で、過去の勇者が身に付けていた御守りだったと逸話が遺されていた。その御守りは邪気を払いのけその者を守ると、そして渡した者と渡された者がまた再び再会出来るとそう言われている。


 ルシウスはそのアクセサリーを受け取り左の手首に付けた。するとそのままメアリーを抱き締めて唇を重ねメアリーの耳元で囁いた。


「俺は必ず戻る帰ってきたら美味しい手料理を食べさせてくれ」


 ルシウスは伝えたい事を伝えて馬車に戻るとベラルテが馬を歩かせる。


 ルシウスはメアリーをメアリーはルシウスを互いに見詰めていた。そして互いに手を振ると見えなくなっても二人は手を振り続けた。

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