第4章 成行と雷鳴さん

その①「大遅刻」

「んっ?何時だ・・・?」

 目を覚まして、。成行は現在時刻を確かめた。

 こうした場合、いつもなら自分のスマホで時間を確認する。しかし、昨夜は静所家に泊ったので、それもできない。部屋の掛け時計に目を向ける。

「2時35分・・・」

 窓の外の景色を見れば、これが午前2時35分ではなく、14時35分だとすぐ理解できる。雲が少なめで、綺麗な青空が見えるのだ。


 今日は月曜日。平日だ。いつもの月曜ならば、午後の授業真っ最中だ。

 成行は浴衣姿でベッドを飛び出た。昨夜、風呂から出ると着替えとして、まさかの浴衣が用意されていた。まるでビジネスホテルのようだったが。


「マズい!これはマズい!遅刻ってレベルじゃねーぞ!」

 成行の泊まった部屋は、静所家の2階。階段を駆け下りて、一目散にリビングへと向かう。

「すいません!誰かいませんか!」

 思わず叫ぶ成行。

「何だ!何かあったのか?」

 リビングには雷鳴がいた。淡いピンク色のタートルネックのトップスに、デニム姿でいた。最初に会ったときのようなメイド服姿ではない。


 雷鳴は午後の一時ひとときをまったり過ごしていたのか、テーブルにはティーカップが置かれていた。そこから甘い湯気が立っている。匂いから察するに、カップの中身はココアだろう。


「あっ!いえ、そうではなくて。もう昼間ですよね?」

「そりゃそうだ。どう考えても朝の5時ではあるまい」

 雷鳴は窓の外を指さす。

「ああっ!大寝坊だ!」

 成行は項垂うなだれる。

「よく眠っていたから起こさなかったんだ。学校には連絡してある。体調不良で今日は休みということになっている。その辺は心配ない」

「そうなんですね・・・」

 一安心しつつも、やはり少しだけ罪悪感はある。


「見事さんは学校に?」

「無論な」

「ですよね~」

 慌てて起きたせいで、少し頭が痛い成行。


「ユッキー。何か食べるか?」

「じゃあ、何か簡単にいただければ」

 遠慮がちに答える成行。

「ここで待っていてくれ。食事を用意する」

 雷鳴はリビングを離れた。



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