#7 ラーメン屋、シャツ、読む


 「ラーメン屋の店員といえばTシャツである」というのは果たして偏見だろうか?そしてそのTシャツは往々にしてラーメン屋あり方を体現している。

 路地を入ってすぐの影に、特に看板を掲げるわけでもなく佇む一軒のラーメン屋がある。特段行きつけというわけでもないが、数ヶ月に一回無性に食べなくなる味なのである。

 

 今日もまたそのラーメン屋に行った。

「塩、麺固め他ふつう」

 そして出来上がるまでの間、何の気無しに店長を眺める。白いTシャツを着ていた。

「つべこべ言うな、読め」

 そう書いてあった。何かの取扱説明書からの抜粋であろうか?

 店長の親父さんが、水切りを勢いよく上下に振る。

 シャッという音と共に器に盛られた麺にスープが注がれ、それまでゆっくりと炙られていたチャーシューが載った。

「あいよ」

 ラーメンが出てきた。出汁の匂いが強いいつものラーメンだ。

 カウンター置かれた故障をかけて匂いを満喫していると、あることに気づいた。

「店長、麺についてる黒いのってゴマじゃないんですね」

 麺には小さな黒い点がまぶすようについていた。

 店長はこちらに背を向けたまま黙っている。その背には「つべこべ言うな、読め」の文字があった。

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