#6 正攻法、神経質、歩行者天国
「第1332回、歩行者天国チャレンジを開催することをここに宣言する!」
「いいぇーーい!」
古い革ジャンを身にまとった青年が高らかに宣言をし、似た格好をしたこっちは小学生ほどの幼さを持つ少年少女が呼応した。
場所は都会のど真ん中、ガラスに朝日が反射してビルに囲まれているにも関わらず明るいスクランブル交差点の端である。
通勤ラッシュの時間帯とあって道ゆく人は多い。しかし通勤者たちは自らの手元にあるスマホの画面か目的のことで頭がいっぱいで青年や少年少女には見向きもしなかった。
彼ら彼女らはこの時間帯のスクランブル交差点には不釣り合いなテンションと身なりであったにも関わらず。
そしてこの時間帯の交差点にはもう一つ特徴がある。
車が通っていないのである。ここで冒頭の青年のセリフに戻る。
「ルールは簡単。歩行者天国の交差点で人にぶつからずに反対側まで行けたら勝ちだ。もしぶつかったら、向こう側に見つかって連れて行かれてしまう。いいね」
「いいぇーーい!」
「それじゃあ、作戦タイムだ!」
青年の号令とともに小学生たちは各々集まって話し合いを始めた。
「サーファはどうする?」
「う〜ん。人が減るのを待つよ」
「なんで?負けちゃうよ?」
「いいよ、負けても。どうせ勝つのは1人だけなんでしょ?失敗したら捕まっちゃうんだよ?」
「神経質すぎるんだよ。今まで捕まった子はいないよ?ここは真っ直ぐ突っ切るべきだよ。正攻法でね」
「やだよ、勝ってどうするんだよ〜」
「いいから、わたしに任せて、一緒に行くよ」
再び青年の声が響く。
「作戦はたったかな?それじゃあ!よーい、どん!」
ボロボロの革ジャンをきた奇妙な格好の少年少女が一斉に走り出した。交差点を迂回するもの、思い切りよく交差点の中心を走るもの、ゆっくりと注意深く避けていくもの。性格がよく出ていた。
「おい!なんだこのガキは!」
交差点の中央で怒声が響く。怒声がした場所では怒り狂った中年男とワナワナと怯えた顔でひっくり返った革ジャンの少年が向き合っていた。
「何が起きたんだ?」と通りがかりの通行人が集まってきて近くの交番からもお巡りさんが来た。
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