第65話 根回しが効きすぎている件
「頼むっ!望月くん、辞めないでくれっ!?」
「社長・・・俺辞める気なんて微塵も無いんですけど、どうしたんですか?」
朝、本社に出勤したら社長が抱きついて来た。
平塚はニヤニヤしながらこっちを見ている。おい、誰か説明してくれ。
「悠里さんはうちの救世主なんだああああ!ここで抜けられたら痛いんだあああ!君もそっちが上手くいったら辞めるんだろう?待ってくれ。待遇を可能な限り良くするから辞めないでくれぇっ!!」
いや、俺なんも不満無いし・・・最近なんか授乳スペースが設置されるのを見守ってるだけだし・・・俺まだ試用期間だし・・・。
「悠里ならわかるんですけど。なんで俺が?」
「『わたしの旦那の給料が少ない』って脅されたんだよぉ!君、実は不満あるんだろう?何でも言ってくれたまえっ!」
すげー必死だし汗びっしょりな社長。と状況がまだ把握できなくてポカンとしてる俺。
んー、俺は別に営業で契約勝ち取ったわけじゃないしな。とりあえず契約内容の確認して、補充して、苦情が来たら平塚に回して、対応してって平塚から返ってきて・・・それの繰り返しで別に貢献してるわけではない。
「社長、俺契約0なんですけど」
「君と悠里さんを足して2で割ったってこっちはすごく儲かっているんだ。悠里さんはそこを言いたいんじゃないかと思うね」
こんな話朝っぱらからしていいのかと周りを見渡すが、平塚はいるけど、他の人は営業に出てるらしくて誰もいなかった。
その代わり、新しく雇ったであろう若い女子事務員が2人いる。
んー、この2人、社長の好みだったのかな?
なんか、ちょっとイラッとしたわ。
「まぁ、貰えるものは頂こうと思うのですが」
「そうだよね?望月くん、君の仕事ぶりは平塚くんから聞いてるよ。随分と顧客に信頼されるのが早いね!」
平塚め、どんな風に喋ったんだよ。ほんとは平塚の雑さ加減の文句の一つ言ったところで大丈夫だとは思うが・・・ここは一応上司を立てるか。
「大変(トラブルに関して)わかりやすく平塚さんに教えて(丸投げして)もらってますから」
「ひっ」
ちょっと平塚を睨んでみた。こんにゃろー。面倒臭いやつ全部俺に回さないで少しは自分で処理してくれよ。
「額は言えないが、悠里さんの半分くらいは毎月出すようにしよう。これでやってくれないかな?」
悠里の半分か・・・悠里の稼ぎが少ない時は俺も道連れってことね。
これ、悠里が仮に辞めたらどうするんだろう?まぁ、辞めさせないようにしたいから俺を巻き込んでるんだよな?
「まぁ、試用期間より全然良いんでOKです。また相談させてもらいますね?」
「頼んだぞー!悠里さんを繋ぎ止めることができるのは君だけだっ!これからも、2人には期待しているよ」
「任せてください。こいつら辞めない様に見張っておくので」
平塚のやつ、上司風吹かせやがって。ま、いいか。多分平塚は、悠里に逆らえない。信者だもんな。後で悠里に話して、ちょっと平塚に反省してもらおうじゃないか。
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