第43話 頭を使えば楽なほうへ
「りゅーた!おばさんに会うの久しぶりだねっ!」
やけにテンションが高い楓の声そのままに、俺の運転は二往復目の疲れもなく、どんどんと突き進んでいく。
楓がいなければ、多分俺は、自分が打算的な人間過ぎて嫌になる。しかし、これはもう性分だから仕方ないと思えた。
色々考える。諦めも、打算も。
なんで悠里と一緒にいるんだと聞かれたら、プラトニックな恋愛観に惹かれたと答えるし、性格真逆だから合わないよと言われても、性格似てる方が嫌だと答える。
要は、自分が必要とされてるから一緒にいるのであって、必要が無いなら無いで構わなかった。
ただ、自分の言葉と裏腹に、やっぱり別れようと言われたのは辛かったんだ。
ほらね、と母親の溜息がまた聞こえてくるようだ。それでも俺は、後悔はしてない。
本当にもう自分の人生を終わりにしようかなと思ってしまうぐらい、この家族でいる時間が大切だったんだ。
あ、いや。ちょっと待てよ。今現在、ここに平塚もいるが、こいつは家族じゃ無いからな。
楓だけ連れて行くのは気が引けたから、一度だけ実家に来たことのある悠里も連れて行く。
悠里を久しぶりに連れていくのはちょっとしんどかったため、平塚も誘ってみた。
平塚は快諾してくれたけど、「おまえ身内の話になるとポンコツになるよな。仕事はできるのに」と残念なやつを見るような目で見られたのが癪だった。
それでもなんだかんだ俺を助けてくれる平塚には俺が言い返す言葉などあるわけが無く、ちょっとした遠出気分での4人の外出となる。
定食屋で昼食を済ませて、普段栄養を取ってない平塚の顔がだいぶマシになったのを確認してから、いざ実家へ。
「おみやげ買いましょう?」
「そうだぞ。土産物は必須だ」
「いらないよ」
「楓、が、選ぶ!!」
スーパーにて楓が車から降りると、悠里が慌てて後を追いかける。
「悪いな、付き合わせて」
運転席で俺は両手を組んで上に伸ばす。平塚も堅苦しくなってむず痒いのか、靴を脱いで足をフロントガラスにくっつけた。
「おっさんの蒸れた足をくらえ!」
「うわっ!曇ったし。マジで臭そう」
「臭くねーよ!」
俺はどんなに疲れても平塚の車で靴を脱いだりはしない。あ、綺麗好きな人って土足禁止なんだっけか。蒸れてる足も汚いと感じてしまうのは俺だけ?
「ほんと、助かる。まだ、距離感が掴めないんだ」
「楓ちゃんファミリーと?それとも実家と?」
「両方かな」
「ここ数日で、考えることが増えたんじゃねーの?良い傾向だ」
どっちも手放すようにして、被害者ヅラして引きこもった。
社会から距離を取り過ごした、2年間のブランクは大きい。普通の社会人のなりをして取り繕っているが、俺が失敗する時はいつも理由は同じで、コミュニケーション不足なのだ。
そんな俺のそばに変わらずいてくれる平塚。
あー、でもな、おまえも・・・
「めんどくさいやつだよな」
「いや、おまえのほうがめんどくせーぞ?楓ちゃんに聞いてみ?」
楓を使うとは・・・まぁ、聞いてみたくはある。これはまた、別の機会に話そう。
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