第41話 楓視点 誰が間違っているのか
「で、俺に全てを投げやがったと」
「平塚おじさん、今日は一日宜しくね!」
「おまえ、昨日危なかったんだよな?なんでそんなに元気なんだ?」
「元気出すしか無いじゃん。家にいたくないし。会社の人に挨拶しなきゃ。これからお母さんがお世話になるんだもん」
「図太いというか、なんというか・・・空元気か。そんなに望月が心配か?」
りゅーたが、宏おじちゃんと静江おばちゃんの家に行っちゃった。
りゅーたは、お母さんとどうしていきたいんだろう?
楓は、お母さんとも一緒にいたい。だけど、静江おばちゃんが嫌な顔するから、言い出せなかった。
楓には静江おばちゃんは凄く優しいのに、お母さんの話をすると、すぐに話題を変えてしまう。
人を好きになったり嫌いになったりするのは仕方がないことだけど、お母さんも悪いんだけど、でもっ。
自分のお母さんが好かれてないことがとても悲しくて、それ以上の言葉が出ないよ。
『その中途半端な関係をどうにかするなら』
静江おばさんが言いたいことは、楓もわかってきたよ。
でもね、悪いことをしてないのに、お母さんが最初から好かれてないのはどういうこと?
お母さんだって、仕事中はキッチリしてるし、笑顔になるし、家の中だと全然笑わないけど、やる時はやる人だよ?
だから、お母さんが静江おばさんに対して失礼を働くとは思わないんだよね。
今日のお母さん、スーツでバッチリ決まってるし。
「会社で何人かに会ってもらうから」
お母さんが、りゅーたと一緒の会社で働くことになって、平塚おじさんと3人で会社まで来たんだけど・・・今日日曜だよね?働いてる人、いるの?
面接するのはいいけど、日曜日でみんな休みのはず。平塚おじさんが美人が来るって偉い人に伝えただけで、どうして男が集まるの?
りゅーたの時は、平塚おじさんの面接だけだった、って言ってたのに。
男って、ほんとにしょーもないなぁ。
「君も新入社員?」
「あ、わたしはまだ中学生です!」
「あれ?もしかして、娘さん?中学生に見えない見えない」
「あ、ありがとう、ございます?」
「独身だからって、みなさんがっつきすぎですよ」
平塚おじさんがフォローしてくれるけど、正直言って気持ち悪い。
お母さんがモテるのはもう慣れていて、男性の視線も慣れてきた。でも、女性が一人もいないのを見て、不安な気持ちが顔に出そうになる。
「母子家庭ではありませんが、娘も連れてきました」
楓はちゃんと、ネットで調べてるし、大人が話してる意味がやっとわかってきたから、お母さんに聞く回数も少なくなってきた。
だけど、うちは特殊な家庭だから、あんまり自分のことを人に話したらダメってお母さんから言われてきた。
その禁止された話題を、お母さんから言い出すのは何でだろう?
それとも、お母さんはアイツのこと、認めてるのかな?
「お母さん、頭大丈夫?」
「何よ。男の人がギラついた目で見ていたら、わたしには夫がいますって言わないとやばいでしょ?」
わざとみんなに聞こえるように言ったお母さん。
なるほど。独り身だと近づいてくる男がたくさんいるから、必要以上に近づかないように牽制してるんだね。
お母さんが発するその暴力的なフェロモンとか色気、加齢臭とかで抑えることとかできないかな?
「平塚さん。聞き忘れていたわ。女性社員は何人いるの?」
「3人だ。ちゃんといるから心配するな」
「そう・・・。みなさんに言っといてね。少しでも変なことしたら去勢する、って」
ぶるっ!っとその場にいた3人のお偉いさんが震えて動かなくなった。
なるほど。って去勢って何?
「大変な仕事だけど、もし何かつまづいたら相談に乗るよ」
「平塚さんしか信用していませんから、いいです」
お母さん、これからお世話になるところなのに、最初からそんか感じでいいのー?
人当たりが悪すぎて、サイヨウキョヒ!なんてことにならないかな?
「君の、履歴書のNLSUで働いたというのは嘘じゃないんだよな?」
「本当よ。問い合わせたらわかるでしょうに。平塚さん、この会社、大丈夫?」
お母さんは昔、営業していたみたい。コピー機の営業だって。わたしはお母さんが営業中に会社でお留守番だったんだよね。
りゅーたがいたから、留守番中も楽しかったけど。
「なぁ、君、ほんとに旦那さんいるの?いたとしても仲悪いんじゃない?」
「セクハラです。それと、子供がいる前でそういう話はやめてください」
「・・・すまなかった。これから、頑張ってくれ」
「わかりました。二度と不愉快な言葉を並べないでください」
「次長、マジで女性社員来なくなるので、話の内容とかちゃんと考えた方がいいですよ?」
「あ、ああ」
平塚おじさんがまともな人で良かった。あとは、りゅーた。これからどうするつもりなんだろう。
明日の打ち合わせ、しなきゃいけないのにな。
ーーー
一応、書きますが、悠里は母子家庭手当を貰ったことはありません。
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