第28話 平塚が俺の話に乗り気だった
翌日、午前中に一件だけ平塚と営業を終えた後、昨日連絡しておいて家の近くまで来てもらった悠里を拾って警察に向かっていた。楓も一緒だ。楓には、学校を早退してもらった。
後ろの席、楓の隣の悠里が車内で何も喋らない。悠里自身、色々俺にひどいことをしたという負い目があってか、平塚とあまり喋りたく無いと思ってるのかもしれない。だが、無言は違うよな。何か、言いたげな顔してるし。
「悠里、おまえのキャリーケースには何もつけられてないみたいだった。だから、楓だけが狙われてる可能性がある。ちゃんと、全部、警察に言えよ?」
「わかってるわよ。ほんと、気持ち悪い男と一緒に暮らしてしまって、気分が悪いだけ。・・・今は、今だけは、隆太に縋りたい気持ちになってるのよ」
「悠里さんさぁ、それは違うんじゃないか?あんたの自業自得だろ?いくら優しい望月が相手だからって、これ以上、調子に乗るなよ?」
「喧嘩しないでよっ!喧嘩・・・しないで?楓が、悪いから・・・」
「楓ちゃん、あんたは悪くない。悪いのは、いつだって大人なんだ。悪いと思ってないことも含めて、ちゃんと言わないと、あんたのお母さんはわからないだろ?」
「だけど、お母さんは間違ったわけじゃないよ!楓はね、お母さんの話を聞いて、お母さんが楓のために選んでくれたって、わかるよ?」
「なんだよ、全部、知ってんのか」
「悪い、言ってなかったな」
「じゃあおじさんが楓ちゃんにも言ってやる。増長するのはやめろ。本来、望月は楓ちゃんにとって、家族でも何でもない他人だ」
「おい、平塚!」
「なんだよ。おまえと楓ちゃんの気持ちの話はしてねぇ。あくまで一般論だ。望月の現状はそうだったんだよ。望月がそれで、どれだけ苦しんだか、悠里さんも、楓ちゃんも、わかるのか?」
「だからっ、だから楓はっ、りゅーたのそばに、いたいの・・・」
「そうだな。そこまで自分で気づけた楓ちゃんは偉いな。だが、悠里さん、あんたは何も変わってない。これ以上、望月に迷惑をかけるなよ」
「おい、平塚、言い過ぎだって」
「言い過ぎなわけがない。現におまえは、2年間、ダメ人間になっている。また、繰り返す気か?」
「そうよ。わたしは隆太には、それだけ非難されることをしているわ。だから、今度こそ、わたしは、1人で生きるから」
「へぇー。できんのか?そうやって何度も、しょうがないと言って言葉を変えてきたやつが、1人で生きられるのか?」
「おい、平塚。おまえが悠里を気に入らないのはわかってる。だけど、今回おまえを巻き込んだ計画には、悠里が必要だろ?」
「必要か?再婚相手のことなんて、探偵に頼めば一発だろ。甘いんだよ。悠里さんを入れる意味があるのか?」
「平塚・・・俺は・・・」
「わたしから、お願いするわ」
平塚が、車を停める。バックミラーを覗きこんだ後、後ろを振り返る。
「お願い?」
「わたしを、働かせてください。お願いします」
悠里は、真剣な眼差しで訴え、お辞儀をした。
しばらく悠里を見ていた平塚が、頭を掻き出した。
「んー、まぁ、いいか。ギリギリ合格だ。2人、いや、楓ちゃん入れて3人、面倒みるかぁっ!」
「平塚さん、ありがとっ!好きっては言わないっ!」
「ったく。楓ちゃんに感謝しろよ?大人だけだったら、多分俺は悠里さんまで面倒見るって言わなかったからな?」
「あ、ありがとうございます・・・」
悠里が後ろからポツリとお礼を言った。
「じゃあ、俺の話に乗ってくれるのか?」
「いいぜ?実は、こういうのワクワクするんだよな」
平塚がニヤリと笑う。なんだよ、最初からやりたいなら、そう言ってくれよ。
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