第27話 疑わしきは、罰せよらしい。


平塚が付き合ってくれることになり、警察に行って事情を話したら、処理してくれることになった。


どうやら、再婚相手がやってることはストーカー規制法にあたるらしい。だが、保釈金を払えば出て来れてしまうのと、初犯なので、罰金刑で済んでしまうといったニュアンスだった。


めんどくさかったのが、俺と楓の関係を説明することだった。


途中で個別で俺と楓が呼び出されて、警察官と話をすることになった。


楓が向こうで何を聞かれたのかは知らないが、途中でしゃべりたく無くなったらしく、「りゅーたは悪くない」しか言わなくなったようだ。警察官の女の人も頑固な楓を相手にして疲れ切ったらしく、近所の交番のおじさんに一緒に住んでいた証言をもらって、事なきを得た。


一旦は、だ。一旦は。


何も解決はしていない。俺と楓が一緒に住んで良い理由も免罪符も無い。


「望月さん、あなたが楓さんと一緒に暮らしていたのはわかるんだけど、父親としてですよね?」


「はい、そうですが」


「どうしたらあなたと結婚できるのか、わたしに聞いてきましたよ。あなたは実の父親ではない、そして事実婚の・・・中途半端な存在です。これでは、誰かに疑いをかけられても、仕方ありません。わたしの言いたいことが、わかりますか?」


「えっと、わたしのそばにいない方が良いということでしょうか」


「そこまでは言いませんが、現状ですと、ここに、母親がいないのが不味いんです。事情はわかります。再婚相手から逃げてるんですよね。でも、連れてくるべきでした。そうしたら、あなたにいらぬ嫌疑をかけなくて済みました」


「すみませんでした」


「あなたのことを少しだけ調べました。住所は変わらずとも、2年間、働いてなかったそうですね。楓さんのことを考えるなら、これからはしっかりとした方が良いと思います」


「わかりました。お手数をおかけしました」


「いいえ。こちらは仕事をしただけなのと、楓さんに・・・気を当てられて余計なことを言いました、すみません。楓さんが相談しに来たのが2回目だったので、母親の存在もこちらは確認してます。明日、母親も連れてきてもらえませんか?」


「わかりました。明日、わたしと平塚は来なくてもいいですよね?」


「はい。でも、あなたが2人を連れて来るんですよね?そんな気がします。ではまた、明日」



ーーーーーー


先に帰った平塚に謝罪の連絡をして、車に乗り込む。


今、もう夜の9時半かよ。長かったな。


「りゅーた、お疲れ様。楓が余計なこと聞いたせいで、ごめんなさい」


楓は、しょげてるというか、疲れ切ってる様子だった。そりゃあ、そうだ。三時間くらいいたからな。俺も疲れたわ。


「気にするな。ごめんな、もうちょっと上手くやれれば良かったんだけど・・・」


「お父さんだけど、違うもん、りゅーたは、りゅーた、だ、もん・・・」


すー、すー、と寝息が聞こえてきた。


俺の左腕に左手を乗せて、楓は横向きのまま寝てしまった。


「楓も、お疲れ様だな」


再婚相手が少しの期間だけでも自由が奪われてくれれば、楓がストーカーされる心配はないな。楓にもそれがわかって、一先ず安心したんだろう。


だが、俺の計画はやめるつもりはない。二度と楓に手を出せないように、俺が頑張るしかないんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る