第24話 血が繋がってないこと。
泣いて鼻水だらけの顔の楓に、ティッシュを渡す。
「楓、大丈夫か?」
「うん、もう、大丈夫だよ。お母さんが立ち直ったっていうのは、信じる」
「そうよ。それでいいの」
「でも、りゅーたは信じられない!」
「いきなり何を言ってるんだ?俺が、ほんとの親じゃないからか?」
「そういうとこ。りゅーたの考える幸せに、りゅーたが入ってない!」
な・・・に?
「ずっと、不思議だったよ。りゅーたは、お母さんと、楓のことばっかり大事にして、りゅーたがどうしたいか、全くわからなかったもん!」
「親っていうのは、こういうもんだぞ?嫁と子供の幸せは、俺の幸せなんだ」
「じゃあ、なんで子供欲しいって言ったの?なんで、泣いてたのっ!?」
そうだ。俺の唯一の誤算は・・・
楓に俺が一人で泣いていたところを見られたことだ。
「りゅーた、正直に、話して?」
まさかの、楓から、俺への、問い。ここで楓からぶつけられるとは、思わなかった。
ま、良い機会だ。話してみるか。
「楓に俺の泣いてるところを見られる前、俺は自分の親に言われたんだよ。
自分の血の繋がった子が悠里との間にできないと、いつか悠里に捨てられるってな。
俺は、それを聞いて怖くなったよ。そうかもしれないと、怖気づいてしまったんだ。
それから、今までの俺の頑張ってきたことが、全て無駄だった気がして・・・それで、子供さえできればな、と思ってしまったんだ」
「隆太・・・」
「りゅーた、確かに、血は繋がってないけど、りゅーたは、わたしの大好きなりゅーただよ?」
「楓・・・」
「そして、りゅーたが大切に守ってくれた楓は、血が繋がってないおかげで、お嫁さんになることができますっ!これで、全部解決できない?」
「いや、それは話が飛びすぎで・・・」
「隆太、わたしは、もう大丈夫よ?あなたを傷つけたわたしが言うのは違うけれど、言わせて。これからは、ちゃんと幸せになって?」
「悠里?」
「わたしは、これから先も、あなたの願いには答えられない。だから、これからは、自分のために生きて?」
「お母さん、もうこれ以上りゅーたを傷つけないでよ。大丈夫だよ、りゅーたっ。楓は、りゅーたをひとりぼっちにする気はないからねっ?」
「なんか、俺、幸せだな。今、幸せだよ。だって、俺の幸せをちゃんと真剣に考えてくれる人が、ここに2人も・・・」
「ちょっと、りゅーた?お母さんは違うでしょう?」
「楓!わたしだって、真剣にりゅーたのことを考えたわ!」
「ふーん。ま、いいよ。りゅーたは楓に任せてっ。それで、お母さんは、これからどうしたい?」
そうだ。悠里のこの先の方向性が全く読めない。
丸っ切り放っておくつもりはない。・・・再婚相手をどうにかするまでは、悠里はずっと逃げるつもりなのか?
「お母さんは、大丈夫よ?」
「それは海ちゃんの話でしょう?違うよ。アイツのことだよ。楓としては、綺麗さっぱり別れてほしいんだけど・・・」
「心配しなくても、別れるつもりでいるわよ」
「そのあとは?」
「・・・・・・」
「考えてないのね。はぁーっ、そうだと思ったよ」
「なぁ、しばらくうちで暮らすか?」
「それはできないから。今日あなたと会ったことが、不倫だと言われたらどうするの?でもまぁ、娘に手を出してる方が余裕でアウトだから、問題にはならないだろうけど。今日だって、この後ホテルに戻るわよ」
「そうか・・・」
悠里の意志が堅いなら、それはそれでいい。だが、悠里自身も再婚相手のことを解決できなくて、不安じゃ無いのか?と邪推してしまうのだ。
「あなた、楓の顔を見なさい?」
「え?」
恐る恐る、楓に視線をやると、ドス黒いオーラを纏った楓が、俺を睨みつけてきている。
「りゅーた?お母さんにまだ未練あるんだね?楓は悲しいよ?」
「おまえ、悠里も幸せにするって言ってたじゃないか。だったら、悠里もここにいた方がいいだろう?」
「りゅーたのお人好し!お母さんの助けて病は、今に始まったことではないし、りゅーたはもう巻き込まれないでよっ!」
楓の強い拒否だった。
そうだ。結局は、悠里も一人では生きていけないのを、楓は知ってるんだ。楓は悠里を見捨てるつもりはない。ちゃんと、支える気でいる。
だけど、俺が悠里に手を差し伸べたら、きっと、変わらないんだ。俺のために、そして悠里のために、楓は言ってくれてるんだ。
「お母さんは、自分の幸せは自分で決められる人。だから、りゅーたが気にしなくても大丈夫。楓だって、そう。決められなくて泣いてたのは、りゅーただけだよ?」
「楓の言い方がムカつくけど、そんな感じよ。この家に住むことは絶対無いわ。でも、ありがとう。楓のこと、頼んでもいい?」
それは、別にいい。楓をここに避難させておくのは賛成だ。
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