第22話 バタバタキッチン
俺が着替え終わると、悠里が解凍したカツオを捌いてる途中だった。
「手伝おうか?」
「何を?危ないから近づかないで」
「ひぃぃ。お母さんが怖いよぉ」
楓が怯えている。なぜなら、悠里の捌き方は豪快だ。まだ凍っているのに、ブツリ、ブツリと力任せにカツオをぶった斬ってる。危ない。でも、俺は切り方なんて知らないし、任せるしかない。
「かつおさん、ごめんね。おいしく食べるからね?」
楓は、まだ料理で出る時の魚の血が苦手らしい。肉は、慣れたらしい。まぁ、それさえも克服していたら、俺の立つ瀬が無い。
「ちょっと、マジで魚屋にクレーム言ってくれない?毎回毎回、鱗ぐらい取ってほしいわ。めんどくさいのよ?」
「鱗の落とし方ぐらい、俺にもできそうか?」
「まぁ、もう終わったからいいけどね。それだけでも隆太がやってくれたら、楽よ?」
あっという間に身が開かれ、おいしい部分がたくさん見える。あ、これから、身を引っ張るんだっけ?
「やっぱ、手伝うよ」
「おっかなびっくりで触るんじゃないわよ。隆太のそれを見て、楓も真似して魚捌けないんだからね?」
「そうなのか?なんか、すまんな」
「か、楓は怖くないよー?」
「はぁ、生臭い。とりあえず、いらない部分だけ捨てなさい、楓」
「うへぇ、気持ち悪い」
「ちょっと!隆太!持つならちゃんと持ちなさい!おろせないじゃ無い!」
「すまん。めっちゃヌメヌメする」
「ああっ、もう。わたしがやるからっ!他の魚も出しなさい?全部まとめてやるから!」
「はい、ただいまー!」
全く戦力になれない俺。だが、楽しい。悠里は怒り口調だが、顔は笑ってるし。楓も、こっち見ながらニコニコしてるし。
こんな、生活だったな。楽しかったよな。
また、3人でできるとは思わなかったわ。
ーーーーーー
「お母さんには、まだまだ教えてもらいたいことがたくさんありそう」
「見て勉強しなさい。教えるのは苦手よ」
「そうやって楓に教えないつもりなんだ!意地悪だっ!りゅーたー!」
「すぐそうやって隆太に頼るなぁっ!」
台所が相変わらず、騒がしい。俺は邪魔にならないように、洗い物が来たら動くスタンスに変更した。
切り方ひとつにしても、味付けにしても、こだわりがあるから手を出せない。昔は麺類料理は俺が作っていたが、それ以外は悠里に任せてたんだよな。
「あら汁もできたわね。もう夕飯食べるの?」
「いいじゃん、食べちゃおうよ。ね?りゅーた」
「よし、じゃあ盛り付けくらい俺がやろう」
「あ、ちょっと。接近禁止!胸とかお尻触ろうとしないでよ?」
「しねーよ!相変わらず接近もダメとか厳しいな!」
「もう、2人は別れてるからダメっ!絶対にダメっ!」
「楓、悠里とは、昔もずっと、こんな感じだったぞ?」
「そういえば、そうだね。どうして?」
おい、悠里。まだ言ってなかったのかよ。
「そうね、食べながら、話しましょう?」
そうか。今、言うのかよ。大丈夫なのか?悠里。
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