第13話 逃げた先に平塚
「はーなーしーてー!」
「楓ちゃん、大きくなったな。よぅ、望月。良いタイミングだったぜ」
「平塚!助かった!楓、お願いだから、一度家に入ろう、な?」
玄関から出たところで、楓が平塚に捕まったみたいだ。平塚、マジでいいタイミングで来てくれたな。
「楓ちゃんよう、何があったかは知らないが、望月は楓ちゃんのことしか考えてない。つまり、望月は楓ちゃんLOVE勢なんだ。わかったか?」
「嫌われたく、ないよう・・・きっと、りゅーたは、わたしのこと、嫌いになるっ!」
「ああ、そういう・・・8年も、ずっと一緒にいたのを忘れたのか?望月は、おまえの大好きな隆太は、簡単におまえを見捨てるやつだったのか?」
「そんな、わけ、ない・・・」
「じゃあ、とりあえず家に入った入った。近所の人に不審に思われたら、どうするんだ?」
「ごめん、平塚さん。なんで今、ここにいるの?」
「コーヒーサーバーを届けに来ただけだ。俺は、望月の上司になったんだぞ?」
「えっ・・・りゅーた、可哀想」
そう言って、とぼとぼと歩いて家に戻った楓。
「平塚、マジで助かった」
「問題山積みみたいじゃないか。明日から、出勤できんのか?」
「してみせる。おまえに迷惑はかけない」
「おうおう。ちっとは頼りやがれ。おまえの事情が複雑だってことは、わかるし、だからって、突き放す人間ばかりじゃねーぞ?俺みたいなやつが、そうだな」
「すまん、平塚。俺は雇ってもらえただけで、十分なんだ」
「明日、朝9時に迎えにきてやるよ。一緒に営業回りだ。って、そこのかわいこちゃんは?」
「早坂乃絵瑠です。楓ちゃんの友達ですぅ」
「俺は平塚淳一。このおっさんの上司だ。今日はもう、帰った方がいいぞ?親子の話に、友達は余計だな」
「平塚おじさんも、楓の知り合いぃ?楓は、もう大丈夫?」
「大丈夫なんだろ?」
「ああ、乃絵瑠ちゃん、後はおじさんに任せてくれ」
俺の言葉に、不安そうな顔をしながらも、乃絵瑠ちゃんは答える。
「わかりました。明日の朝、迎えに行くって伝えてください」
「乃絵瑠ちゃんとやら、送って行こうか?」
「いいですぅ。家はすぐそこなので。では、また明日ぁ」
乃絵瑠ちゃんが、自分の家の方向に歩き出す。
平塚が面倒くさそうに俺を肘でつついた。
「サーバー設置までがサービスなのに、家に入りづらい。明日の夜にするか」
「すまん」
「おまえがどうしようと別に構わないけどよ。すれ違いだけはやめろよ?もう懲りてるんだろ?」
「善処する」
「まぁ、いいや。また明日な」
そう言って、車に乗り込んで走り去ってしまった平塚。
なんか今日は、色んな人に助けられてばかりだな。
今は、ただ、楓の不安を取り除きたい。悠里が絡むと、どうしても俺は頑なになってしまう。
楓の希望は、悠里も助けること、なんだろうな。
ーーーーーー
「りゅーた、ごめん。ちゃんと話すって言ったのに、逃げちゃった」
「気にするなよ。戻ってきてくれて、ありがとう。俺は、楓と一緒にいたい」
「うん、わたしも、りゅーたと一緒にいたい。お母さんの話して、ごめんね?りゅーたも辛いよね?」
「俺のことはいいから、話してくれないか?どうして、別れた原因が楓にあると思うんだ?俺は、そんなこと全然思ってないんだけどな」
「うん、わかった。りゅーた、これは、わたしが、ずっとお母さんに言っていたことなの」
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