第8話 楓は友達を連れてきたいらしい。


朝、楓の体内時計との違いをモロに感じた。


楓が、朝6時に起きている。対する俺は、起き上がることができない。具体的に言うと、目が開かない。


「おはよう、りゅーた。なんか、違和感なく起きちゃった」


「おはよう。そりゃあ、良かったな」


「落ち着くー。朝ごはん、ありますかー?」


「ないんですー」


「買って、来ますかー?」


「お願いするー」


眠いので変なテンションである。


「お母さんの服とか、置いてないの?」


「残念ながら、処分しました」


「制服でコンビニ行くのやだなぁ。なんか服、貸してよ」


「おおう。2番目の引き出しに、シャツと縮んだニットががが」


「さすがに下はサイズ合わないから制服スカートでいいや。パンとかでいい?」


「いいぞー」


全く体が動かない。早くても、今の俺は9時起きのルーティンだったのだ。


「どーん!!!!」


「うごあっ!?」


上から隕石が落ちてきて、完全に覚醒した。楓が俺に勢いよくのしかかってきたのだ。


「起きてー?楓ちゃんの生着替えの時間だよー?」


「俺はそっと目を閉じた」


「勝手に終わらせないでよー。いけずー」


パサッ、と楓が着替えてる音がする。まだ目が開けられなくて良かった。


「お湯を沸かしておいてね?それぐらい、できるでしょ?」


「はいよー」


楓が階段を降りていく音を聞いて、ようやく俺はむくりと起き上がる。


今日から、楓の生活リズムに合わせなきゃな。よし、やるか。




ーーーーーー


「え?仕事してないの?」


楓が買ってきたパンとインスタントのコーンポタージュを飲みながらの、彼女の第一声がそれだった。


「全くしてないわけではないけど、ほんとに微々たるものだ」


「よく生きて来れたねー。えらいえらい」


頭を撫でられる。何なんだろうか、だんだんと楓のペースに乗せられている気がする。


「今日は就活してくる。遅くなるかもしれないから、楓には合鍵を渡しておくからな」


「自然にそういうこと、平気でするよね」


「ん??」


なんか、おかしいことがあっただろうか?合鍵、必要だろ?


「なんでもなーい。それで今日さ、学校終わったら友達連れてきていい?」


「・・・別にいいが、ここに連れてくるんだよな?」


「1人は小学校からずっと友達だった子だから、りゅーたが知ってるかも!乃絵瑠(のえる)ちゃん、なんだけど」


「知ってるわ。うちの自転車壊した子だろ?」


「覚え方ひどーい!!今もずっと仲良しで、いつも一緒にいるんだよ?」


そうか、あの子とつるんでるのか。楓の自転車壊した時は、もう関わらないだろうと思ったんだけどなぁ。親同士が微妙でも、子供達は仲良いみたいだ。


「あと、男の子の友達もいるんだ。紹介するね?」


まさかのボーイフレンドいる発言きたあああああ!!!


おじさん泣いちゃうよ?泣くからね?


「そんな悲しい顔しないでよー。ほんとに、ただの、友達だから。ねっ?」


「トモダチ・・・トモダチ・・・」


「あっちゃー。りゅーたが壊れちゃった」


まさか、彼氏とイチャイチャできないから、家貸して?みたいなノリですか?


うがああああ!!悠里だけでなく、楓にまで利用されるのは勘弁だああああ!!!


「ありがと、りゅーた」


「はえ?」


「やっぱり、りゅーたと、この家が好きだよ?」


ぐぬぬぬぬ。機嫌とろうとしたってそうはいかないぞ?


くっそー!男か、男が来るのか。今日は早く帰らねばならない!


「人がせっかく、勇気出して好きって言ったのに、はぁー」


楓、ごめんな。悠里のせいで、おまえの言葉を素直に受け取れない。どうしても、裏があるんじゃないかと考えてしまうんだ。


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